「人工社会 −複雑系とマルチエージェント・シミュレーション−」

出版記念セミナーの議事録

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【発表者と公演内容】

16:20 〜 17:00

(株)構造計画研究所 創造工学部部長 服部 正太

Photo of Mr.Hattori

Topic: 「リスク分析とコンジョイント分析の金融商品への適用」

 創造工学部で開発してきたインタビューシステムおよびコンジョイント分析とモンテカルロシミュレーションを利用した需要予測システムを金融商品で検証する。

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【議事録】

【司会】

 すみません、時間が超過しておりまして。創造工学部の服部でございます。本日は長時間、1時から聞いていただきまして大変ありがとうございます。発表の内容がおもしろいもので、カットするのもどうかなと思いまして一応させていただきました。私のはおもしろくないかもしれないんですけれども、一応題名にありますとおり「金融マーケティングの事例紹介」ということで、創造工学が過去やってきました手法の幾つかをサンプル的に紹介して、こういうふうに使っていけるのではないかというような例を見せていきたいと思います。その前は、概略ですけれども、我々がどういうことを過去10年でやってきたかということを含めて簡単にお話しさせてください。

 話の順序として、あと25分ぐらいで終わらせますけれども、まず最初に3つの技術テーマ、きょうはマルチエージェントばかりを話してきたんですけれども、それ以外にもございますということ。それから、2つ目にはマーケティングの事例紹介、私は本当に金融というのがよくわかっていないもので、自分の勉強のためにもこのプロジェクトをやってみたんですけれども、そういう。今後、我々創造工学がどういうことをやっていきたいかというようなことをお話しておりまして、きょうは我々創造工学が大変お世話になっているお客様もいらっしゃっていますし、大学の研究機関の方々もいらっしゃっています。あるいは、将来我々と違った道でこういった分野をやっていかれるという将来のコンペティターになられるようないい方もいらっしゃるかもしれませんので、ぜひそういう方々に、こんなのはおかしいとかいいとかいろいろ批判していただければと思って、最後のセッションを進めさせていただきます。

 創造工学でもともとやってきたことは、言ってしまえば、この3つになるんじゃないかなと思います。1つは、意思決定に情報技術をどう使っていくかということでして、その意思決定と情報技術ということで、人間を観察するという視点、それから2番目には、個の行動の測定ということで、どうにかしてそれで意思決定をしている個人のルールがわかるような測定方法はないか、そういったための情報技術というのはどういうものだろうというような点です。3番目には、そういったデータを集めてきても、単にそれを集めて集計してもおもしろくないので、それをどうにかして楽しいシミュレーションができないかな、そういうような観点で運営をしています。この10年、この3つを段階的に追いかけてきまして、現在に至っているという次第です。

 我々、創造工学というのは、構造計画の中では今8部門あるんですけれども、その中で一番新しい部門でして、それでも10年たってしまったんですが、89年ぐらいからコンピュータ・インタビューと、コンジョイント分析というのをやらせていただいています。こちらにご参加の方で、その当時からいろいろお世話になっている方もいらっしゃいますが、我々はそういったコンピュータ・インタビューということと、コンジョイント分析ということで、評価というものをまず確立したいということで情報技術をやりました。それから、93年ぐらいからアメリカのコロラド州のデンバーにありますデシジョニアリングという会社のクリスタルボールというソフトウエアの販売を始めまして、リスク分析というようなこともできないかなということで始めております。これはクリスタルボールというソフトウエアを使って、金融商品だけではなくて、世の中の事象に関して、確率分布でモンテカルロ・シミュレーションをやっていく。お手元に配っておりますパンフレットがございますので、詳しくはそれを見ていただければいいと思いますが、そういうようなことをやっております。それから、きょう主題で出てきております複雑系、エージェント・ベースド・シミュレータというようなシミュレーションを行っております。

 これらは思いつきでひとつひとつぽんぽんぽんとやったわけではなくて、それぞれある連関した形で進めてきたということを一応申し上げておきたいと思います。こういうような3つの技術以外にも、その周辺技術として集団合意形成ツールの作成ですとか、これはGDSSとか言われる分野なんですが、グループ・ディシジョン・サポートシステムとか、CSCW(コンピュータ・サポーティド・コーポレーティブ・ワーク)のような分野、それから認知マッピングと言われるような分野とか、インターネット関連を含めたデータマイニング、解析というようなことをぽつぽつやっているんですが、先ほど申し上げたように、3つの、いわゆるテーマというものが今のところはメインのテーマになっておりまして、それと関連づけて、こういうようなチャレンジをしております。

 コンジョイント分析に関しましては、もうプロの方もたくさんいらっしゃるのであまり言いたくはないんですけれども、簡単に申し上げますと、多属性の問題があったときに、そこで評価をする水準というのはいろいろございまして、世の中は相対的な評価の時代になってきておりますので、単に価格が安いとか、ある機能が1つだけいいとか、そういったことでは測れないような時代になっております。したがって、そういったときに幾つかの多属性の評価をどうやってやっていくんだ、そういった点でどういうふうに売り込んでいくんだというようなことから、こういった分析手法がようやく認知されつつあるのかなと思います。

 対象としては、日用品、耐久消費財、サービス財というようなもので、いろいろな評価ができますが、特に最近はサービス関係の評価ということで、いろいろ提案させていただいております。業態別には、各企業の守秘義務がございますので、いろいろあると思いますが、日用品ではこういうようなもの、耐久消費財ではこういうようなもの、サービス財ではこういうようなものというような幾つかの事例もやっております。大体日本でこの10年で80社ぐらい、150品目ぐらいの商品に関して、コンジョイント分析というものをかけてきております。

 それとともに、コンピュータ・インタビューというもう1つの付属した形で始まったものなんですけれども、コンピュータ・インタビューのよさというのもございまして、コンピュータ・インタビューというのは、従来、紙と鉛筆でやっていたアンケートとか、そういったものをコンピュータに置きかえてアダプティブにやっていこうというようなことで、答える側が検討が簡単にできるとか、裏にいろいろなロジックをめぐらせておくとか、そういった複雑なアルゴリズムを含めたアンケートが可能です。よく紙のアンケートでぼーんと厚いのが来たりして、何ページに飛べというようなアンケートに答えていらっしゃると思いますけれども、そういうのに比べると、いろんなアルゴリズムで細かい分析がアダプティブにできるというような特徴がございます。

 しかも、ご承知のとおり、コンピュータ・インタビューを使った形では、単に文字を出すだけではなくて、画像や映像、それから音声といったようなものも出して、なるべく臨場感にあふれたシステムを提供しております。しかも、コンピュータの発達とともに、あるいはネットワークの発達とともに、単にスタンドアローンでやるのではなくて、郵送、フロッピー、あるいはCDで出す、それからインターネットでウェブにアクセスしてもらう、それからインターネットで質問票を送りつけて答えてもらう。いろんな代替手段ができております。評価ツールとして、先ほどから申し上げている回答者に対して思考環境の構築ができて、インタラクティブにそれができること、それから効率的なデータがとれること、しかも回答者は図書券を500円もらうとか、そういうようなインセンティブだけでなくて、楽しんで回答してもらって自分の位置づけを知る。そういった使い方としてのコンピュータ・インタビューも最近はなされるようになりました。

 しかも、そのインタビューというのが、単にデータを取るだけのツールではもうなくなってきておりまして、展示会場にパソコンを置くとか、インターネットのウェブ上でアクセスさせるとかいうようなことで、消費者、あるいは意思決定者に対して納得させるようなツールを提供しておりますし、そういった問題としては、特に耐久消費財を100万円以上するようなものを買う場合に、こういったコンピュータ・インタビューで、自分たちで意思決定をしてみようとか、あるいは金融商品なんかもそうなんですけれども、どういう保険に入ったら自分に合うのかなというようなことを決めていく。しかも、1人で決めるのではなくて、複数の家族、妻と夫とか、それから子供と何とか、あるいは住宅の場合ですと3世代で決めるとか、そういったようなところでこういったインタビューをして、自分の位置づけ、ポジショニングを知るようなこともできます。

 次に、コンピュータ・インタビューとコンジョイント分析の次の課題で、リスク分析の話ですが、リスク分析に関しましても、最近非常にはやっているようです。ただ、リスク分析に関しての関心というのが、そもそも、ものの本によりますと、やはり1973年、オイルショック以降、変動相場制になって、いよいよ金額というようなところでものごとをはかれるというような段階から次第に広まってきて金融工学がはやったんでしょうけれども、そういった中でリスク、リスクというようなこと、あるいは日本における規制緩和が行われて、民間企業においても、特に鉄道とかJRとか、情報通信、エネルギー、金融といったような分野で規制緩和が行われて、本当の意味での商品競争が行われ、それのリスクというようなこともあります。また、大学関係でも、東工大の理財工学とか、東大の先端経済研究センターとか、そういった分野でまとめてそういったものをリスクとしてはかるというようなこともできております。

 クリスタルボールに関しましては、お手元の資料を見ていただくんですが、アメリカでは非常なシェアを持っておりまして、クリスタルボール、あるいはクリスタルボールプロというようなシステムでビジネススクールなどでも活用されていますし、あるいはアメリカの企業で言いますと、GEのウェルチなんかが、GEの中の社内の事業計画は全部このクリスタルボールで計画して提出しろというような言い方でしておりまして、それに影響された日本の大企業さんもかなりのライセンスで買っていただいているのが現状です。

 いろいろでてきましたけれども、こういうような中で、リスク分析にしろ、インタビューシステムにしろ、なんでマルチエージェントにつながるかといいますと、先ほどから何人かの先生が言ってらっしゃいますような限定合理性の話がありまして、……ナショナリティ、そういった中で、要するにこういったリスクをはかったり、あるいは個人を幾らはかってもシミュレーションしたときにはうまくいかないのではないかと。すべての、いわゆるシミュレーションとか経済学の前提というのが、市場は効率的だと考えたり、すべての市場参加者は、同じ期待、同じ戦略、同じ成果を持っているというような前提をもって経済学を考えているので、そういった学問体系の中ではなかなかいかないのではないかなということで、次に出てきます複雑系の概念、あるいはシミュレーションというようなものも出ております。

 先ほどから複雑系のところはかなりいろいろな発表がなされましたので詳しくは申し上げませんが、いずれにしましても、ここで、ほかの先生方はあまり言っていらっしゃらないのであれですが、私としては、シミュレーションというと、すぐに予測とか数値の範囲とか、そういうものを求めると思いますが、私自身はこの複雑系のシミュレーション、マルチエージェント・シミュレータは、実験段階で、試行の実験だと考えております。ですから、あまり数値が当たったとか外れたとか、そういうことでこのシミュレーション手法がいいとか悪いとか、最初から議論なさるのはやめていただきたいなと、そこだけ申し上げておきます。

 幾つか事例はありますけれども、そういった点で、2年間かけてつくってきましたABSというソフトは、現在、日本では大学の研究機関に30校から40校貸し出しております。バグを出すということもありまして、まだまだ市販では出しておりませんけれども、今期中には、いわゆる民間の方々にもご提供して、いろいろな活用方法をご検討いただきたいなというふうに考えております。IPAのというか、通産省のプロジェクトで約1億円かけてつくったシステムでございますので、そんなに間違ったものではないなと、システム的にも間違ったものではないなと思っておりますが、今後とも、こういった分野を広めていきたいと思っております。

 具体的に今先生方が出されているような研究計画というのは、何でなされているかといいますと、こういうような事例で、個々個別には研究計画の段階ですのでよくわかりませんけれども、日本の研究者はマルチエージェント・シミュレータを、きょうの4つの発表以外には、こういう分野で使おうというふうにされております。私の希望といたしましては、また、そういったマルチエージェント・シミュレータのいわゆるコンテストみたいなのをやって、どういうものがおもしろいかみたいなことを先生方も集めてみんなでつくっていこうというふうに考えておりまして、あまり今これをビジネスにすぐ役立てて、すぐお金もうけをするというような立場ではないかなというふうに考えております。

 今回、そういったような創造工学の背景がございまして、きょうご紹介しますのは、コンピュータ・インタビューとコンジョイントを使った形のマーケティング手法を金融機関向けに使った場合にどうなるかということで、私が一番不得意としますデリバティブ商品を使ったコンジョイント手法ということで、コンジョイントで効用値をはかり、ディスプロディタンの統計動向をはかるというようなことを考えております。私は創造工学の部長もやっているんですけれども、弊社が小さな会社なので財務の部長もやっておりまして、各銀行様からデリバティブの商品をいろいろご提示いただくんですけれども、全然ちんぷんかんぷんでよくわからなかったので、デリバティブってどういうものだろうと思いまして、こういう研究をしてみました。

 属性といたしましては、こういうような5つの属性。上限金利とキャップタイプと利払い期間キャップ料、それから取り組み期間という5つの属性で金融商品を表現しております。この中で、細かいことはいろいろありますが、私に聞かないでください。あまりよくわかっていないのであれなんですけれども、このなかで一番あれなのはデリバティブ商品でございますから、今は金利が安い状態ですけれども、だんだん金利が上がっていくような局面で、金利が上がったときに、ある保険料を払っておけば、全くそれを保障してくれるというようなところで、キャップタイプというものが幾つかありまして、プレーンというのは全く金利が上がった分だけ、その分だけ、あるお金を前払いしておけば保障してくれると。コリドーというのは、ある領域の中で金利を保障してくれる。レンジというのもその1つのパターンです。ただし、金利以上に上がったらパーになってしまうと、そういうような幾つかのパターンのキャップがありまして、それを金融と、いわゆる企業の担当者はどう評価されるかというようなことで、今回、インタビューをしてみました。

 画面としては、ご存じの方はいらっしゃると思いますけれども、こういったコンジョイント質問というのは、大体一対比較形式で、右と左でどっちを選ぶかみたいなことを出しておりまして、何回も何回もその組み合わせを属性として出していきまして、金利を含めてやっております。今回は一般消費財と違い、専門家の判断でしたので、これを企業の財務の担当者の方々等にインタビューさせていただきまして、23サンプルいただきました。こういったもので、いわゆるどの属性のどの水準がどういう効用値になるかというようなことを推定した。

 まとめてしまうと、これもあれなんですけれども、金融商品の中では、ここにございますように、5つの属性の、それぞれの水準に効用値が割り振られております。

 ここにございますような、いわゆる金融のキャップタイプと言われるようなところの属性で、プレーンというのは、金利が上がれば上がっただけどれだけでも保障してくれるということですので、そこに一番高い47ポイントという点で、キャップタイプでは評価がいきますし、期間としては長い期間取り組むということで、取り組み期間を5年という形にしておいてもらったほうが、デリバティブ商品としてはありがたいという点。高いところほど好まれるという結果になっています。単位の問題は各企業によってどれくらいの支払い料になるかというのはあれなんですけれども、キャップ料がどれくらいかということで、1つの相対比較にしております。

 この絵を見てわかるとおり、取り組み期間で2年より5年というところが一番差が大きくて、それ以外ではやっぱり、いわゆるキャップ料のパターンというんですか、それが今回は。利払いをいつ設定するかということで、3カ月ごとにするか、6カ月ごとにするか、1年ごとにするかというのも違いになっておりますが、3カ月と6カ月ではそれほどの差がなくて、1年だと差が出るとか、そういうような効用値が読めるわけです。実際問題、当社の未熟な財務部の人間と、これは下の段、それから上の段が、経験者の場合では、例えば属性評価も違いまして、3カ月ごとの利払いというのに、当社の経験者のほうは非常に価値を置きますけれども、そうでない場合は変わるのか、ここの事例によって、それぞれ評価がなされます。

 こういった点でコンジョイント分析というものは、銀行の方々がお客様をはかるためにも使いますし、逆に、財務担当の企業側で自分たちはどういう選好を持っているのかというようなことでも聞かれまして、こういった金融商品のやや難しい問題に関しても、これからは、マーケティング手法の適用がなされるのではないか。あまりにも金融工学といいますと、正論でいわゆる数学的なモデルとか精巧な数値とか計算式とか、そういうところが言われていますが、むしろ金融でこれから大切なのはは、それの商品がどういうふうに一般に評価され、理解されているかというようなところでして、今後、一般人にもいろんな金融商品が出てきた場合に、それがどう評価されて、だから、マーケティングとしてはどうなんだというような観点でなされていけばいいのではないかなというふうに感じる次第です。

 それ以外も、次にクリスタルボールというソフトで、実際、コンジョイント分析の結果から各個人が選択する商品予測をしておるんですけれども、時間もちょっと限られておりますので、このシミュレーションは簡単に済ませたいと思います。実際やった事例は後で簡単にお話ししますけれども、いわゆるコンジョイントの結果から、各個人が選択商品を予測して、それぞれの長期にわたる金利水準を確率分布で設定します。もとからのシミュレーションによって、この取り組み期間における支払額と銀行の利益を予測して、クリスタルボールで、今のお客さんだったらどれくらいの利息で利益をもたらすことができるのかというようなことをシミュレーションしています。基本的には、キャップ料と支払額との差で利益を評価していく。ちょっと時間か押していますので、このシミュレーションは後でさせていただきます。あるいは、後日させていただきますが、そういったような事例として、クリスタルボールでのリスクシミュレーションも活用できます。

 それからもう1つ、先ほどのそういった効用値を使って、マルチエージェントでどういうふうなシミュレーションをしていくのかということなんですが、これも先ほどの個々人のエージェントにどういう期待をさせた効用値を埋め込むかというようなことをモデルとして踏みまして、それで金融商品と、それからエージェント、いわゆる利用者との側の関係を記述して、エージェント間の相互作用とか、ローカル情報とかグローバル情報とか、そういうようなのを決めてシミュレーションをしていけばと思います。今回、これ自身のシミュレーションはつくっていないんですけれども、私自身、来月、KCMで主催されます経済物理学セミナーというのがあります。そこでやはり株式の関係の論文を出しておりまして、こういった短期的な取引における、あるいは長期的な取引における担当者と個人投資家の比較みたいなものも、こういったエージェント・シミュレーションでつくってきているんですけれども、そういうような連動でエージェントと金融商品、金融構造のあり方みたいなものもご説明できるのではないかなと思います。

 そういった論文はウェブサイトに載せて公開していきますので、また、見ていただければと思います。

 今後、ちょっと時間も押しているので、あるいは、せっかくとっていただいてあれですけれども、この創造工学はどういうことをやっていきたいかということを最後にもう一度まとめて申し上げておきたいと思います。構造計画は、創業の理念以来、ずっと学会、産業界の中間にあって、触媒みたいなことをやっていきたいということでやってきております。また、お客様に対しては、……お客様にとってみると、自分たち自身もやはり楽しいことを続けていきたいということを理念として掲げておりますので、今後、創造工学がやるようなことは、先ほど申し上げた3つの技術テーマをますます発展させるとともに、やはり単にアメリカから持ってきて、それを投入するというだけでなくて、やはり日本流にアレンジをする、日本流にちゃんと理解して、日本の現状に合わせて成果を出していくというようなことを繰り返し進めていきたいと思います。

 また、世界標準ということで、エージェント・ベースド・シミュレーション(ABS)もそうなんですけれども、日本語版と英語版を両方常につくってきておりまして、海外での発表というようなこともやっておりますので、日本で閉じたような形ではやらないようにしていきたいと思います。そういった点で、皆さん方、今後こういった分野、幾つかきょうはかいつまんでご説明しましたけれども、コンジョイント分析、あるいはインタビュー・システム、それからリスク分析、マルチエージェント・シミュレータ、そういった分野に関してご関心がいただけるのであれば、どのような形でも結構ですので、ご支援、あるいはご協力いただければと思っております。

 個々の技術テーマとして、蛇足になりますけれども、最近やっているテーマでは、これは地球産業文化研究所なんていうところからいただいているんですけれども、実験経済環境の構築というようなことで、……環境をネットワークでつくるシミュレーションと書いてありますが、いわゆる排出権、CO2の問題を、実験経済学的な場をつくりまして、プレーヤーをいろいろ置いてシミュレーションしていくし、経済学も環境構築をしております。これは、コップ6とか、来月国際会議が開かれるんですけれども、そういうところで日本のいわゆる環境問題に対する発言、あるいは排出権をどう扱うかというようなことで、提案するようなシステムとしても役に立つかなと考えています。

 あと、トピックス的には、先ほどから申し上げているインタビュー・システムをどこの携帯端末に載せてやっていくということで、確かにiモードなどで簡単なアンケートはいろいろあるんですけれども、より複雑にとれるような携帯端末対応のインタビュー・システムを載せていきたいと。ドコモ様側のほうでもいろいろと考えていらっしゃると思いますが、我々としても、こういったインタビュー・システムを、そういったモペラみたいな携帯端末の上で動かしていければと考えております。

 3番目は、先ほど……ほうの話もありましたけれども、交通シミュレーションというようなもの、いわゆる人の行動に関しては、交通シミュレーションは非常におもしろいと思われますので、全国の3分の2の信号機まだ整備がきちんとされていないということなので、ミクロレベルのそういった交通シミュレーションみたいなものに、ああいったマルチエージェント・シミュレーションを用いて、もうちょっとお役に立つようなことができないかなと、そういうふうにも考えております。

 いずれにしましても、創造工学は、我々は知識サービスを提供する集団でございまして、その知識というのは、形態としてコンサルティングやシステム構築、あるいはパッケージ販売というようなことでやっておりますけれども、それぞれコンサルティングにしろ、システム構築にしろ、パッケージ販売にしろ、自分たちが得意とする技術を経験に持って知識として蓄え、あるいはチェーンとして持っていることを提供するものであって、単にプログラムがつくれますとか、単にシステム構築ができますとか、そういった集団ではないことをご理解いただければと思います。

 金融関係の方々にも結構来ていただいて、あるいは、データをたくさんとっておりますが、そこの細かいご説明をする時間がきょうはちょっとなくなってしまって大変申しわけないんですけれども、個別にこういったデータに関しましては、今後ともお話しさせていただけると思いますので、私またはデータをとりました担当の川野にそういった点ではいろいろ聞いていただければと思います。本当に長いこと時間を拘束して、あるいは発表者の時間調整がうまくできなかったために長引いてしまったことをお詫びします。最後までご静聴いただきまして、本日は大変ありがとうございました。今後とも、創造工学、あるいは構造計画をよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

 

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