「人工社会 −複雑系とマルチエージェント・シミュレーション−」

出版記念セミナーの議事録

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【発表者と公演内容】

14:00 〜 14:40

東京大学,新宅 純二郎 助教授

 1958年生まれ。 82年東京大学経済学部経営学科卒業。 86年東京大学大学院経済学研究科にて経済学修士号取得。 89年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。89年学習院大学経済学部専任講師。90年学習院大学経済学部助教授。93年東京大学経済学博士取得。 96年東京大学大学院経済学研究科助教授。

Photo of Mr.Shintaku

<著書>

 『日本企業の競争戦略−成熟産業の技術転換と企業行動−』(Competitive Strategies of Japanese Firms),有斐閣,1994年.

 『日本企業の競争戦略−成熟産業の技術転換と企業行動−』,有斐閣,1994年.

 「製品イノベーションを導く戦略の一貫性−ソニーの家庭用VTR開発−」,『ケースブック 日本企業の経営行動 第3巻 イノベーションと技術蓄積』,有斐閣,1998年(共著者:椙山泰生).

 「技術転換への対応能力:セイコーとスイス時計メーカーの比較」,竹内弘高ほか編『マーケティング革新の時代 第2巻:製品開発革新』,有斐閣,1999年.

 「家庭用ゲームソフトにおける開発戦略の比較−開発者抱え込み戦略と外部制作者活用戦略−」,東京大学大学院経済学研究科 日本経済国際共同研究センター Discussion Paper CIRJE-J-11,1999年3月(共著者:生稲史彦,田中辰雄).など。

Topic: 「経営学におけるマルチエージェント・シミュレーション」

 経営学の世界においても、組織論、マーケティング論などマルチエージェント・シミュレーションの適用場面は広い。これまで、ABSを利用して「規格競争モデル」「製品差別化モデル」「コミュニケーション競争モデル」など複数のモデル構築を行なってきたが、本セッションでは、このうち、いくつかのモデルを実際に動かしながら、経営学におけるマルチエージェント・シミュレーションの適用可能性をご紹介したい。

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【議事録】
 

【司会】

つづきまして、「経営学におけるマルチエージェント・シミュレーション」ということで、東京大学経済学部の新宅先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【新宅】

 ただいまご紹介いただきました東京大学の新宅です。「経営学におけるマルチエージェント・シミュレーション」ということで、20分ばかりお話させていただきます。

 われわれ構造計画さんのABSの(?)ということでしたけれども、ABSを作るときに一緒に共同プロジェクトをスタートさせまして、ふたつ、きょうまだお見えになっていない、あとでお見えになると思うんですけれども、組織論関係で高橋教授と、それから戦略論関係で私で、それからそれぞれ助手というものを募集しまして、実際のモデルを作りながらABSを(?)という作業をここ半年ぐらいやってまいりました。

 そのなかで、途中でいろいろ、どういうものに、経営学にどういうふうに流用すればいいかということを考えながら進めてきましたけれども、最終的には一応形になりましたのが、ここに書いてあります4つのモデル、組織論に関しましては「コミュニケーション競争モデル」という仮の名前をつけておりますけれども、これと、「タスク選択」、ないしは「課題選択」と言ったほうがいいかもしれませんけれども、このふたつ、戦略論に関しては「競争戦略モデル」と「規格競争モデル」というそれぞれふたつ、4つのモデルを(?)しております。

 この内容につきましてはあとで少し時間をとりましてこの4つのうちですね、この「コミュニケーション競争モデル」というものと、それから「競争戦略モデル」というものに関しましては、若干時間をとりまして内容を照会したいと思います。最初にちょっと私のほうでここでご紹介するのは、このふたつの「タスク選択モデル」と「規格競争モデル」というこのふたつについてちょっと若干、簡単にまずここでご紹介した上で、もう少し詳しく内容を残りのふたつについてあとで桑島と和田のほうからご説明、という発表の形式になっていきます。

 まず「規格競争モデル」というものですが、これは先ほど水野さんのお話にも出てきましたけれども、この手の、経営学におけるこの手のマルチエージェントのものを考えるときに、比較的よく出てくるものでして、いわゆるVTRにおけるVHSとベータですとか、PCにおける規格、どちらの規格が(?)になるかといったことに関してはかなりランダムな要因があって、必ずしも事前に(?)、これをABSを使っていろいろ実験していこうということです。それで、ベースとしましては、最期伊庭さんという帝京大学の方があるんですけれど、そのモデルの考え方に少し若干ですね、耐久年数とか買い替えサイクルというのを入れてやった。それでどんな形かというと、こういうふうな(?)シェアについて表しているふたつの規格の競争ですけれども、シェアの推移を表していて、この空間上に消費者がずっと配置されていて、どちらかの規格に簡単な購買傾向を示すというような形のモデルになっています。

 そこから出てきた結果がいくつかあるんですけれども、まだ暫定的なもので、ちょっとここからきれいな形で出ていないのでまだご紹介しづらい部分があるんですけれども、このなかで考えてみますとこのへんの(3)のあたりでして、実際に普及したあとも条件によってはシェアが逆転するとか、あるいは新しい規格が普及していくという、そういう状況がどうもありそうだということが、買い替えサイクルというものを入れることによって起こりうるような状況になっていまして、実際それがどういう状況で動くかという確定まではまだ正直に申し上げまして出ておりませんけれども、今までの研究から出てきた結論とはちょっと違う話が出てきそうだという、そういう状況です。

 ふたつめがタスク選択のシミュレーション・モデルというものでして、これは組織論のほうの話なんですけれども、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、これはですね、従来の研究で、1950年代、60年代のアトキンソンという方研究から離したもので、達成動機のプラスマイナス、ここでは強い(?)とお考えになっていただいたほうがいいんですけれども、個人的なパーソナリティとしての達成動機の強弱があったときにどんな課題を投げれば一番達成動機が強くなるかというような話で、最初に今までのいろんな実験等で出てきた結果というのは、中程度に困難な課題、これが一番達成動機が高くなるという結論が出ています。それに対して、「誇り」という要因が入りまして、そのなかで、(?)のものの変形なんですけれども、どうなるかということをやったのがこの課題選択、タスク選択のものです。そうしましと、簡単に説明だけ申し上げますと、従来のモデル、アトキンソンのモデルとは違う結果が出てきそうで、どうも直観的にはですね、われわれが想定しているような、必ずしも中程度のものだけじゃなくて、パーソナリティだけじゃなくて、仕事に対する誇り度ですね、それから、そもそも投げかける課題の困難性といったものに対して、もうちょっと現実的な解が出てくるんじゃないかというような、簡単な結果ですけれども、そういうものが出てきています。

 このへんちょっと大変はしょったご説明で申し訳ないんですけれども、ちゃんとふたつのモデルに関しまして、和田と桑島からご説明申し上げます。

 すみません。こちらのほう、(3)のほうから。

【和田】

 すみません。いま先生に代わりまして、「競争戦略モデル」(?)をご説明させていただきます東京大学の和田と申します。皆さまの手元の資料ではちょっと(?)。とりあえずABSをどんなふうに使うかということを考えまして、とりあえず二次元空間というものが(?)ので、われわれのほうでまずそれをいわゆるプロダクト・マップととらえ、その空間に拡張した(?)配置するということから始めてみようと思いました。

 プロダクト・マップというのは二次元空間上に各商品をどのように位置するかといったものを配置したものでありまして、例えば右に行くほど高い製品、左に行くほど安い製品というふうにとらえる(?)こともできますし、(?)まったくネガティブとポジティブな(?)、逆の意味とされているものというふうに並べたものでももちろん(?)っします。そのような(?)でプロダクト・マップを仮定しますと、各消費者の好みというか、現実の製品といったものを配置することができます。実際にはこのようになりまして、このような感じの図になります。色の濃いところ、四角いマスの色の濃いところには消費者がたくさんいる、つまりいわゆる人気のあるところ、それで、(?)です。

 時間の関係でちょっととばしまして、それで、消費者というのは自分の好みに従って製品を選びます。まず初期段階では(?)もの、二期目以降にはまず現在の製品に満足していることを判断します。もし満足していまして、その製品が次期に発売されている、これはあとの企業の(?)しますが、それであればそれを(?)で、購入回数(?)となります。もし満足していても次期にその製品が発売中止になっていまして、変えなくなった、または満足しなかったら、とりあえず全部の製品を見回して購入されている製品を観察します。全部を見回して観察の結果前期と同じ製品だったらまた前期と同じ製品を購入しますし、前よりもっと納得のいく製品を見つけられましたら、新しい製品に乗り換えます。それで連続購入回数というものは「1」になります。このようなルールで各消費者は製品を購入しております。

 ルールのほうはちょっと(?)と思うんですが、ビデオのほうはまた、消費者はどのような製品を買っているかという(?)に基づきまして、つぎの次期にまた新しい製品を購入していきます。発売されている製品が最低シェア区分、例えば(?)製品であれば5%ぐらいのシェアを持っているのが妥当だと、(?)を満たしていればその製品は次期も発売(?)。しかしそれを満たさないような製品はちょっと採算が割れてるというふうに判断しまして、とりあえずその製品の発売をやめて新しい製品を出そうと。とりあえず企業は製品差別化戦略と、模倣製品とというふたつの戦略をとっています。製品差別化戦略というのは、ほかの市場にある製品とまったく違う独自のものを出すことによって、発掘されていない顧客といったものを獲得しようというような考えの戦略です。だいたい10×10の、プロダクトマップを10×10に分けてあるんですが、それをまた16個に分けて、そのなかに製品が少ない、独自性があると思われるところに、製品を新たに置いていくという(?)。もう一方の模倣製品というのは、ただ単に前よりもシェアを伸ばして一番売れている製品、そのすぐそばに製品を出してやろうといった戦略をとっています。

 これでちょっと実験をしてみようといった感じで(?)。

 とりあえず実験のまず(?)市場に(?)企業がどのような戦略をとっているかによって、要するに消費者のほうで満足する製品がちゃんと発売されるかといったことをちょっと見てみようというものです。とりあえず(?)でしょうか?

 非常にちょっと速くてよくわからなかったんですが、これが両方の企業が差別化(?)。とりあえずいろんなところにどんどんどん空いているところを見つけては製品を出していくというようなことをやっています。

 これは模倣戦略。これは両方とも模倣戦略をとった場合で、とりあえず前の期のシェアが高いところにどんどん置いていこうという感じのものです。

 この1?3というのは、どの企業が差別化戦略で(?)、それに対して売れ筋の製品がどのように(?)というようなことを(?)。とりあえずつぎのほうで、まず消費者の、消費者の好みと実際に買った製品とのプロダクトマップ上での平均といったものを取っていまして、その約数、つまりこれを満足度と思っていただければいいんですが、とりあえず片方の企業では差別化戦略を行って、空いたところにどんどん製品を展開していって、(?)を行うとけっこう満足の行く製品をちゃんと市場に供給することができる。しかし模倣戦略だけだと、最初の製品は(?)だけで製品観察を終わってしまっているので(?)、消費者の満足の行くものはできない。実験2では、さっき言ったように片方の企業が差別化戦略をとると、消費者の満足の行く製品が出るのですから、差別化戦略をとることは企業にとって合理的であろうかといったことを実験したものです。

 (?)同じ条件で企業AとBを表していて、差別化戦略というのは模倣戦略をとる企業に対して強いかといったものを実験したものです。

 結果だけ言いますと、20期目(?)からしまして、差別化を行った企業のシェアの平均、そして50試行中、シェアが50%を超えた回数をとったもの、同じ条件でありましたら差別化戦略を用いる企業というのは、ある程度合理的な設定(?)なので、市場に対しては差別化戦略をとるところが合理的であると。また、(?)企業にとって差別化戦略は有利であるかというのを調べたところ、(?)企業にとっても(?)ない製品を置いておくよりは差別化戦略をとって(?)企業に対して、早い時期からどんどんプロダクトマップ上に有利な点を探したほうが(?)が上がるということが出てきました。

 今まではただ単に差別化戦略が優勢だったというので(?)ですけど、とりあえず消費者がある程度の満足をしないで、ひたすら自分の好みに近いものを買いに行っているというふうに、いろいろ(?)しまして、(?)、そうすると模倣戦略を行う企業は強いというような結果が出ました。

 ちょっとリンクしていないですみませんけど、結局いまのところをまとめてみますと、だいたい言えるということでは、とりあえずこのモデルの過程では、ロイヤリティ、つまり連続購入してどんどん消費者が、不便であるけど愛着を持ったり、(?)な感じになってくると企業は(?)競争において差別化戦略を採用することが合理的な考えです。差別化戦略をとる企業(?)結果、消費者の趣向に近い製品が供給されると、しかしロイヤリティがつかない場合は、(?)製品のほうが優勢になる。差別化戦略を使わないで消費者の趣向に近い製品が供給されない可能性があるというような結果になっています。

【桑嶋】

 それでは「コミュニケーション競争モデル」というものについてお話をご紹介します。私たちの、まずモデル、問題意識なんですけれども、組織はどのようにして形成されてくるのか、それから、どのような性質をもった組織が競争に生き残るのか、といった問題意識につきまして、そのメカニズムについて、コミュニケーションに絞ってモデル化しました。ある意味ではコミュニケーション自体を餌にした競争モデルというふうに考えられますので、「コミュニケーション競争モデル」というふうに名前をつけました。

 基本ルールの一番目なんですけれども、エージェントは、より多くの「アイデア」とコミュニケートできるようなポジションを求めて移動する。このことで、エージェントは単独でいるよりもクラスターに参加することを選好する。

 もうひとつの、第二番目の基本ルールなんですけれども、複数のクラスターが存在する場合には、エージェントは、より多くの「アイデア」をコミュニケートできるクラスターの選択をする。そのことによって、複数のクラスターが衝突した場合に勝敗が生まれる、ということになります。
 今回の私たちのモデルのひとつの特徴なんですが、エージェントの表面積というものを考えてみました。本モデルには、表面積の異なる複数のエージェントが存在している。ここで「表面積」というのは、比喩的な表現でして、このモデルのなかではコミュニケーション能力の大きさというのを表しています。これはどういうことかと言うと、モデル上は、コミュニケーション能力のエージェントというのは、「表面積の大きなエージェント」として表現されています。この表面積が大きいエージェントは、より多くのエージェントと接触ができる、競争することができますが、要するにコミュニケーション能力が高くなるというふうに考えています。

 そうしたこの、「コミュニケーション能力」の異なるエージェントが入っているシミュレーションをやった場合の観察のポイントなんですけれども、3つほどこれから考えてみます。一番目はクラスターの成長スピードというものがどのように変化するのか、それから、クラスターの大きさはどのように変化していくのか、それから三番目に、クラスター間の競争にどのように影響するのか、といった点を観察すると面白いかなと思いました。

 それから、具体的なモデルの仕様についてなんですけれども、このモデルではパスの長さというものと、クラスター値というものについて最初に定義しています。まずはパスの長さなんですけれども、同色のふたつのエージェントAとBの間がすべて同色のエージェントでつながっている場合は、それをパスと呼んで、AとBはコミュニケーション可能とします。

 二番目に、パスの長さというものは、エージェントAからBに到達するまでに経由するエージェントの個数とします。ただし、B自体も数えますので、AとBが隣接している場合には、L=1となります。
 それから三番目に、いくつかパスがあった場合には、そのうち最短のものをLとして考えるということです。

 具体的にどういうことかと言いますと、例えばこちらの場合はAとBが隣接しているので、L=1。斜めに行っている場合にも1ですね。それから横に行っている場合には、1、2、3、4、5と数える。それからこの場合も、1、2、3、4ですね。というふうに数える。これがパスの長さです。

 それからもうひとつ、クラスター値のほうなんですけれども、あるエージェントにとってコミュニケーション可能な同色のエージェントのクラスターのサイズをクラスターと考える。

 ただし、このクラスターのサイズと言っても、Cはクラスターを構成する同色のエージェントの個数の単なる合計じゃない。Lが大きくなると伝達に時間がかかるということを考えまして、1/Lで加重した合計個数というふうに考えます。

 したがいまして、同じクラスターに所属していても、そのポジションでCの値は変わってくる。一般的には、クラスターの中央に近くなるほど、Cの値は大きくなるというふうになります。

 具体的には、例えばAの場合には、L=1が1個、2個、3個あるんですね。L=2のものが、1個、2個、3個、4個、5個ですね。そしてL=3のものが、1、2、3。そして合計、先ほど申し上げました最初の分がありますので、合計するとクラスター値がAの場合には6.5個。同じようにB、Dを数えますとこういった値になって、中央に行くほど値が大きくなります。

 それで基本ルールなんですけれども、Cの値が大きければ、一定時間にそれだけ多くの情報を収集できることになると考えまして、より大きなCをもつエージェントが競争優位に立つというふうになります。

 具体的なルールなんですけれども、ふたつあります。ひとつは、各エージェントは、より大きなCを求めて移動する。もうひとつが、別の色のクラスター、ここでは赤と青に分けて考えているんですけれども、別の色のクラスターと接触したエージェントは、もし相手方に組したほうがCの値が大きいというふうに考えのであれば乗り換える。つまり色が、赤から青、あるいは青から赤に変わるというふうに考えます。

 それで先ほど申し上げましたように、表面積の大きなエージェントということで、この大きなエージェントを入れてみようというふうに考えます。大きなエージェントにはどんな特徴があるかというと、ふたつあります。ひとつは表面積が大きい。表面積は大きいんだけれども、どんなに大きなエージェントであってもパスの長さを測るときには「1」と数えるということですね。
 そしてこうした大きなエージェントを投入することによってどういうことが起きるかという予想なんですが、大きなエージェントが投入されますと、そのエージェントを核にして非常に大きなクラスターが形成されるんじゃないかということが、予想としては当初ありました。結果についてはこれからお見せしようと思いますが。

 大きなエージェントの具体的な例なんですけれども、先ほどお見せしたA、B、Dとあったその値なんですけれども、Aのクラスター値について、先ほどは6.5だった。じゃあ、その横に大きなエージェントBがあったらどうなるのかということになるわけですが、クラスター値が「1」のものは、1個、2個、3個ですね。じゃあ「2」のものはどうなのかというと、1、2ですね。あとはD全部で1個と数えますから、2個が1、2、3、4、5、6、7、8になりますね。要するにここのAから見ると、Bのところを経由して続くだろうと(?)。そうしますと、大きなエージェントを投入すると、(?)7.0に変わるといったことが表れてきます。

 そして実際にシミュレーションをやってみるわけですが、基本的な(?)からお話しますが、実際には基本ルールの(?)ルールがあって、こういったルールの(?)場合の結果というのが面白いんですが、それでは基本ルール同士を比較した場合をこれから(?)。

 ふたつのケースと考えます。ひとつは、大きなエージェントのないケースで、長さ1の赤いエージェントが10個、それから青いエージェントが10個。もうひとつのケースは、赤いエージェントが長さが1のものが8個と、大きなエージェント、長さ3のものを2個入れたものですね。数は両方とも10個です。
 ちょっと実は、パワーポイントの資料が、トレースしたものがあったんですけれども、これは古いバージョンでして、口頭で申し上げますと、各ケースで10回ずつ試行して、各試行ごとに1000期まで(?)ということです。実はバージョンの違いがありまして、本当のパワーポイントのほうは新しいバージョン(?)と思ったので、古いバージョンなので(?)。
 ひとつのバージョンというのは、ひとつはエージェントは今いるポジションのクラスター値が最大の場合はそこからそのまま動かないというものでして、もうひとつのバージョンが、今いるポジションのクラスター値の大きさにかかわらず、いろんなポジションに移動するというふたつのバージョンがありまして、きょうお見せするのはそのまま動かないバージョンということです。お願いします。
 
 そうですね、これが大きなエージェントのないバージョンですね。今のと、大きなエージェントを入れた場合の違いというものを見ていただきたいんですが。図形のつぎのをお願いできますか。29番目のやつが比較的……

 ポイントは大きなエージェントを入れたのと入れないのとの違いということで、入れるとどう変わるかといったところをちょっと見ていただければ面白いですね。
 もともとは先ほども申し上げましたように、大きなエージェントの場合に、小さい普通のエージェントとぐちゃぐちゃっとこう集まってですね、大きなクラスターになるというふうに予想されていたんですけれども、実はちょっと予想と違う結果になってしまいました。赤い、そうですね、赤い長いの見えますね、赤い……(テープ終わり)

 ……しかしながら、それ以後というのは分岐して、表面積を持つエージェントを投入したケース2のほうが、平均クラスター規模、クラスター値の合計平均が大きくなるということです。ここでは、表面積の大きなエージェントがいったほうが、……立ち上がりが早いというふうに書いてありますが、要するに、これはもう1つのバージョンですね。きょうお見せしたのではなくて、エージェントが今言ったポジションに入れない、いられないという設定にしますと、こういった結果が出やすいというふうに思います。
 一番最初の10回ぐらいは、先ほど申し上げたような形なのですが、それを過ぎますと、ここに書いてあるのは、要するに、きょうお見せしたほうじゃないほうのバージョンの結果なのですが、平均クラスター規模が大きくなって、クラスター値の合計もケース1が大きくなる。長期で見た場合には、ケース1のほうが、非常に大きなクラスターを形成し、コミュニケーションの……高いといったことが見られます。ただ、……されて、要するに、今言ったポジションにそのままいつづけられるという設定にしますと、こういった結果にはならない。この違いは……。

 さて、以上のような結果から、大体どのようなことが言えるかということなのですが、1つは、表面積の大きなエージェントを投入すると、クラスターの形成、立ち上がりを迅速にする効果がある。したがって、大きなエージェントを見ると、例えば時間との競争をして、研究・開発活動なんていうものを考えるときには、非常に効果が高いということがあるのではないかということが予想されます。
 それから、2番目なのですが、表面積の大きなエージェントというのは、クラスターの中心にいるのではなくて、常にクラスターの周辺部に……。先ほど申し上げましたように、もともとは、その大きなエージェントを中心にして、その周りに集まる。今、そちらでいうと青のほうですね、青のようなイメージになる。しかも、投入して、当てられそうだというふうに予想したのですが、実際にやってみると、青の場合は、今そうなっていますけれども、大体多くの場合には、今の赤のように、大きなエージェントはクラスターの周辺のほうにいるという場合が多かった。これは実は、トーマス・アレンという人が言っているゲートキーパーの役割をしているのじゃないか。これが当初の予測とちょっと違いまして、おもしろい結果が得られたと考えているところです。

 それから、最後なのですが、表面積の大きなエージェントを投入したことによって、赤エージェントですね、最初に2個投入したほうが強くなったということはなかった。これは、先ほど多少ご説明しましたように、表面積の大きなエージェント自体が……、要するに青になっていますね。青になってしまったために、そうはならなかった。そうすると、大きなクラスターをつくるということを考えた場合に、コミュニケーション能力が高いだけでは、組織みたいにならないじゃないかというような考察が出てくるわけです。

 ちょうどお時間になりましたので、先ほど申し上げましたように、実は今回、私たちがつくったモデルというのは、基本ルールのほかに、方向性ルール、常習性ルール、ランダムルールといったものも考えていまして、こういった異なるルール間の競争というのも、おもしろいのではないかというふうに考えています。

 以上です。ちょっとすみません。準備がうまくいっていませんで、項目のほうのシェアも少し……申しわけありません。以上です。

【司会】

 ありがとうございました。

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