「人工社会 −複雑系とマルチエージェント・シミュレーション−」

出版記念セミナーの議事録

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【発表者と公演内容】

9:40 〜 10:10

(株)構造計画研究所 創造工学部部長 服部 正太

Photo of Mr.Hattori

Topic: 「日本発マルチエージェント・シミュレータ − ABS」

 社会システムシミュレーション技法の一つとしてのマルチエージェント・シミュレーションの系譜をたどりながら、今回通産省 情報処理振興事業教会(IPA)のご支援を受けたABS(Agent Based Simulator)プロジェクトの概要およびシステムの特長を紹介する。また、同分野の今後の発展可能性についても論じる。

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【議事録】

【司会】

第1セッションは、「日本初、マルチエージェント・シミュレータ」という演題で、私ども構造計画研究所創造工学部部長であります服部のほうからお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【服部】

おはようございます。構造計画研究所創造工学部の服部と申します。きょうは、お忙しい中、おいでをいただきましてありがとうございます。私のほうからは、きょうのセッション全体の概要と申しますか、そういったものを含めて……。私ども構造計画を中心と致しまして、パートナーの方々、大学の先生方を含めて、この1年半ほどやってきましたエージェント・ベースド・シミュレータの位置づけと、それから今後の活用に関して、ご報告方々、お話しさせていただきたいと思います。

 エージェント・ベースド・シミュレータ、ABSというのは、アンチ・ブレーキング・システムと、そんな意味もあるのですが、我々も略称としてABSと読んでおります。ABMというのは大陸横断何とかと言われて、いろいろ略称はございますけれども、ABSというのをつくってまいりました。社長の冨野のほうから構造計画の由来はございましたし、あまり詳しくはご説明しませんが、我々の基本的なやり方は、ブリッジをしていくということであり、今回の場合も、IPAのプロジェクトで、教育の情報化、投資というプロジェクトに応募しまして、そこでこういったシステムを開発しました。

 我々が始めました創造工学部は、英語名をイノベイティブ・インフォメーション・テクノロジー(Innovative Information Technology)と言いまして、一部の方々には、どこの学部だというような言い方をされる部でございます。お手元に創造工学部の青いパンフレットをお配りしているかもしれませんが、その仕事といたしましては、意思決定と情報技術ということで、人間の意思決定はどういうふうになっているのか、あるいは、それを情報技術でどういうふうに解釈していくのかというようなアルゴリズムの研究、あるいは、人の意思決定と行動ルールの実際の測定方法として、どういうことができるのか。最近の情報技術を使って、どういうシステムがつくれるのかというようなこと、ここでは特にインタビューシステムの開発というところで、対話型のインタビューシステム、あるいは、インターネットを使ったインタビューシステム、そういったものをずっと開発してきております。

 3番目になりますけれども、そういった意思決定の研究やデータの収集ということをずっと続けてきておりまして、……方は多いと思いまして、……システムですとか、トレード・オフですとか、……の意思決定支援ですとか、そういうことをやってきたのですが、それではそういったデータを全部集めて、全体のシミュレーションをするということはどうなんだというところで、いつもひっかかってしまうことがあります。個々のデータを全部積み上げていって効用値を出して、それで全体のシミュレーションを幾つかやるのですが、実際問題、世の中の事象となかなか合わない。どういうふうに解釈していいのかよくわからない。そういうようなことが出発点となりまして、複雑系、あるいはマルチエージェントシステム、そういったものに、この4年ほど注力をしてまいった次第でございます。

 我々は、大学研究機関と実業界とを結ぶブリッジのサービスということで、株式会社でございますので、企業の意思決定に役立つようなサービスを提供しながら、この問題解決をしなければいけない立場にあるのですが、そうは申しましても、基礎研究として、こういった課題をどうにかする道はないのかということで、このエージェント・ベースド・シミュレータの動向に注目したということです。

 ……分析ツールといたしましては、1970年代から始まりました多属性効用理論、あるいはトレードオフの分析、もう20年前になりますが1980年に、ケニー・ライハの翻訳本を出して、そういったものを始めております。しかし、それは古典的な理論となっていまして、なかなか応用がされなかったわけですが、そういった分野、プラス、今度はリスク分析ということで、……ネットを使用の方はご承知かと思いますけれども、クリスタルボールというモンテカルロのシミュレーションを使ったエクセルベースのシミュレータの販売等もしております。トレード・オフ分析にしろ、リスク分析にしろ、社会事象を解釈するためのツールを使いながら、今回、社会事象を対象としたシミュレーションということで、エージェント・ベースド・シミュレーションというものをやっております。

 ただ、こういった分析手法を幾ら出すにしても、経営者の場合、特にこういったものをつくり上げる、……能力というものがかなりございますので、皆さんに使っていただけるベースとなるようなものを、この上の3つをやるに当たりましても、非常に強調しておきたいことです。

 大学の先生方がきょうはとても多いので、あまり私みたいな者がシミュレーションの課題みたいなことを挙げてもお恥ずかしい次第なのですが、現在、社会事象のシミュレーションでは、やはりいろいろな課題があると思います。その1つは、大きく言って、先ほどから繰り返しておりますが、部分の集合が全体をあらわさないということで、これは、もう変な還元主義や……主義ということではなくて、後でエプスタインさんのお話からもあると思いますが、ジェネレーティブな考え方、あるいはコンストラクティブな考え方というようなことが最近言われてきております。いずれにしても、部分の集合と合わせ、あるいは、分析対象を細かく細かくしていって、それを集合して、集めて、それで何かを言おうとしても、なかなか言えない。その理由は何かと申しますと、その部分と言われている部分同士の相互作用をどう評価するか、あるいは、そういった相互作用が起きて、ばっと世の中が変わるような事象、発現をどう理解するか、……をどう理解するかといったようなところが、特に社会科学あるいは社会科学が対象とする社会事象のシミュレーションでは、課題になっているということでございます。

 今まで、社会事象への適用は、これももう専門家の方々には当たり前のような話ですから、ざっと大枠でまとめて見ていきますと、1950年代の後半から60年代にかけて、いわゆるビヘービア・サイエンスと言われる行動科学革命というものがあります。コンピュータを使って何か解析すれば、こういったもので何でも出てくるだろうという楽観的な時代がありました。それから、1970年代になりまして、汎用コンピュータの統計パッケージも整備されてきます。あるいは、データもひとつひとつ……ようになって、やりやすくなってきますと、……とかシステム・ダイナミクスの手法とか、私はちょうどこのシステム・ダイナミクスにあこがれて、こういった分野を勉強してきたわけですけれども、そういったものが出てまいります。
 1980年代は、……とか、……とか、いろいろ言われてきておりますが、いずれにしても、これらがまだまだ全部社会事象に対してのIPOを網羅して、あるいは完全に説明していないが上に、皆さん、今の段階でも、いろいろな課題を持っているのではないだろうか、そういうふうに考えて良いと思います。
 特に、1990年代になりますと、カタストロフィー……カオスとなったり、複雑系という言葉になったり、進化とレボリューションということになったり、いろいろしておりまして、今の段階では、まだまだ今後の展開が必要なステージにあるというふうに理解しております。

 では、社会事象に対して、マルチエージェント・シミュレーションだったら、どういうことができるのだろう。そういったことに関してもまとめています。ある人のまとめで、あるいは、これはアクセルロッドというミシガン大学の先生のところから持ってきた定義ですけれども、彼の定義によりますと、ある環境、ある場に複数のエージェント、行為者を置いてそのエージェントが、……つくり上げる創発的な社会秩序を観察する試行実験であるというふうな定義をしておりますが、まさに、こういったマルチエージェント・シミュレーションは、この定義を出発点にだんだんかわっていけれればいいのではないかなと私も考えております。

 エージェントという言葉は、別名では代理人という言葉もございまして、ソフトウエアの世界では、また別の意味もございますけれども、ともかく、後で出てきますが、ある対象物がアクターと言われたり、エージェントと言われたり、人間であったりするわけですが、そういったものを主に対象にしながら、ただそれが何かを積み上げて、相互作用を起こして、場をつくり上げて示すような、そういうシミュレーションが今後はできるのではないかなというふうに考えております。

 そのエージェントの特徴といたしましては、ともかく部分だけに焦点を当てるのではなくて、全体あるいは全体の構造を解釈して、それを予測につなげる。ただ、後半のこの予測につなげるというところでは、まだまだ課題は多いと私個人は思いますが、いずれにしても方向としてはこういうものを示していくことで価値が生まれるのではないかと思いますが、……。こういったマルチエージェント・シミュレータが出てきた背景は、特にITのコンピュータが非常に進歩して、それで生まれたのですが、それ以上にやはり社会事象に対して、例えばデータベースをつくって経済予測をしても外れる、データがたくさん集まったけれども、それで何かを言えないことがあって、経済学の先生方はそうじゃないと言われるかもしれませんが、そういうようなことが多く起きているということで、マクロ、ミクロの問題の高まりというのも重要な課題かなと考えています。

 こういった課題の中で、アメリカでもいろいろなシミュレータが起こっておりまして、いわゆるこういったシミュレーションに関しましては、……が高まった社会を分析する装置として、情報量の増大、あるいはIPSの装置の増大というようなものの高まった社会というところで、人間あるいは人間を含めたコンピュータ、そういった社会を分析するためにも、新しいシミュレータが必要なのだろうと思います。

 さらに、今まで経済学部を中心としてやられておりました完全情報の仮説、あるいは合理的な意思決定の仮説、そういったものが主流だったわけですけれども、エージェントの中に、もうちょっと不完全な情報を組み込む、あるいは、エージェントの中に、もうちょっと不完全な意思決定をする人を組み込むというようなところでシミュレーションがしやすい段階が今来ているのではないかなと。一元的に、一義的に、その全部を完全情報だ、あるいは……だというふうにしてすべてを決めるのではなくて、相互作用の中で、こういった不完全な情報、あるいは不完全な意思決定をする人たちを入れて、シミュレーションをしていくことができるのではないかなというふうに思われております。

 しつこいようですけれども、エージェントというのは、代理人ではなくて、ここでは……の主体……。あるいは、このエージェントでは、とにかく対象を何にするかということを限定して、その限定した対象に対して解釈をしていく。解釈から意思決定をしていくというようなシミュレーションをとりつけたい。また、この対象となるエージェントというのは、自然界で言いますと、……細胞、遺伝子、ニューロ、神経、植物、動物、自然界の存在としての人間というのもあるでしょうし、こういったものを対象としますが、特に、私が強調したいのは、人間社会においては、生産者、消費者、経営者……とか、自分が持っている問題意識に応じて、対象のシステムを限定して解釈するという点では、どういうシステムをミドルレンジで徹底して問題解決に持っていくかということが重要になった点です。コンピュータ・ネットワーク関係を考えるのでしたら、ファイバー・クライアント、あるいは利用者という場合もございますでしょうし、株式市場を考える場合ですと、経営者、お客、株主、それぞれの問題意識に応じて、決定エージェントの設定は変わってきています。

 過去のシステム・ダイナミクスと、マルチエージェントとの対比というふうにしてお話しするとわかりやすいかなと思いまして出しておりますが、システム・ダイナミクス、SDの手法というのは、事象を中心としたモデルでございまして、ある事象の間は、1つはストックとフローのモデルで、基本的にノードと全般というか、その関係に関して規定したものです。その規定は、一般的には設計の過程でございまして、そういう意味でやっていきますと、いろいろ難しくなる点はございますけれども、そういうような過程があって、1970年代、皆様ご存じのとおり、マルコポーロのレポート、あるいは……した……世の中は全部ある程度見えてしまうのではないかという時代があります。そして、パッケージとしても、日本でも発売されていましたが、……とか、ステラとか言われるようなソフトで、……をやることが、大学の先生方、教育機関を通じてそうなりましたけれども、いちいちはやらないで今日に至ったと言えます。

 これに対しまして、マルチエージェントのシミュレーションと言われる分野は、個々のエージェントが中心。先ほどのシステム・ダイナミクスでは事象中心と言いましたけれども、エージェントを置いて、エージェントと他との関係で、エージェントをその中に内在させて、そのエージェントの中にも、また階層的に内部モデルをつくることができます。我々が例にして大変お世話になっております、サンタフェ研究所のSWARMというシステムも、こういった手法でUNIXベースでできております。あるいは、MITのSTARLOGOと言われるプロジェクトも、こういったマルチエージェントの手法を使ったシミュレーションでございます。

 あくまでもこれはスターティング・ポイントの企画でございますけれども、こういった点で、……示せることもありますでしょうし、あるいは、マルチエージェント・シミュレータで示せることもあって、どっちがいい悪いということを言うわげではございませんが、マルチエージェント・シミュレータというのも、1つの手法として、今後ある程度普及していける分野ではないかなと思いまして、システム・ダイナミクスと使い分けていくようなことが大事なのかなと考えております。

 繰り返しになりますけれども、MITのレズミック先生が、『Turtles, Termites, and Traffic Jams』という本を書いていらっしゃいます。これは1994年に出ておりますが、たしかNTT出版のほうから近々出版予定というふうに伺っておりますが、そういった研究分野、LOGOベースの、高校生を中心とした教育ソフトということで、STARLOGOがございます。あるいは、サンタフェ研究所では、UNIXベースで、一応ウインドウズでも動くのですが、UNIX・OSを中心とした形で、非常に能力は高いけれども、扱いづらいSWARMというものがございます。こういったソフトを中心として、このソフトを基盤にして、サンタフェ研究所のほうでも、エージェントベースドのシミュレーションの方法の研究がなされており、最近では特にアメリカのインディアンはインディアンの先住民族とか、そういった人たちに……に関してのエージェントベースドの研究とか、あるいはコスト・トラフィックスですとか、いろんな分野の研究が行われています。
 事業としては、一番まとまっていますのでは、これもウェブ・サイトを見ていただけばわかると思いますけれども、アクセルロッド先生がミシガン大学でやっていますシステムで、スタートからSWARMを使いながら、ミシガンの……大学院の学生を中心にエージェント・ベースドを教えるということで、カリキュラが。ちょっときょうはここにホウテイジのあれを書いておりませんけれども、そうしたものも……。

 今までの実例に関しましては、これも私が調べた限りでは、……なりますが、これは絶対でございますが、工学系では、高等学校の人工生命、あるいは……という言葉で共通しておりますが、そういった中で、ウェブ・サイトの名前が人工生命の宝庫ということになっていますけれども、名古屋大学の有田先生のホームページに、日本での研究、あるいは海外の研究を含めて、……が100以上提供できるような……。ぜひとも、そういった分野をご参照いただければと思います。いずれにしましても、工学系では、こういうオートマトンの人工生命、……アルゴリズム、プログラミング、GAというような部分で協力がされてきたのですが、これを社会科学事象に対してなされているという点では、まだまだ経験が少ないかなと思います。

 経済学の分野では、最近、1997年に進化経済学会というのが設立されて、……ですが、ある程度認知されてきております。そういうような分野と、あるいは複雑系関連の書籍というものを見ても、これは……ベースで計画をしたのですが、これは……が86年以降、87……出ているんですが、本当の意味で、何が本当かはありますが、いわゆる科学的にそれを分析した本としては、きょう、いらっしゃっていると思いますけれども、生田目先生、……ぐらいしか、こういったものを体系的になさったものはないだろうというふうに思われます。

 これはちょっと冗談ですが、そういった分野よりも、むしろ、最近ベストセラーになっております『リング』『らせん2』というような小説の世界では、人工社会というようなものが非常にうまく描かれておりまして、読んだ方はおわかりになると思いますけれども、現実社会と人工社会との間、サンタフェ研究所も出てくるのですが、その間を行き来しながら、あるコンピュータ社会というものに人間を置いて表現している本ですとか、あるいは、これも一昨年出たと思うのですが、通産省の官僚の方が書かれた「三本の矢」という本で、日米の政治経済紛争シミュレーションというようなものを課題にした、この中でマルチエージェント・シミュレータを使って、政策活動を実行するみたいな話が出てきますが、そういうようなものなのですが、いずれにしても、ある意味では、……の世界の話ですから、実際はそうなっておりませんけれども、内容的には、こういうことができたらいいな、こういうふうな方法はあるんだろうかという夢をかきたてるという意味では、こういう本をごらんに……。

 話が長くなってあれですけれども、ABS(エージェント・ベースド・シミュレータ)の開発の経緯というものをご報告させていただきますと、1998年の9月から、ことしの2月までかけまして、1年半、IPAの教育用システムの開発ということで、応募し、審査を受けて、許可されました。この開発に関しての特徴は、何と言っても、システム開発を管理するだけではなく、それの教育の実践ということでして、一体、学生さん方はどういうふうに反応されたか、そういうところを実践して検証するということが必要ですので、ソフトウエア開発会社といたしましては、非常に厳しい日程の中で、開発もし、バグもとり、教育の実践にも使っていただく。そういうようなことができた次第でございます。

 実際、システム開発は、ことしの8月ぐらいに一応完成し、それ以降、9月以降は、後で発表していただく先生方の研究室で、実際に使っていただいて評価していただくということでございます。参加主体は、構造計画研究所創造工学部と、いわゆる教育実践に関しましては、国際大学グロコムにやっていただいておりますけれども、東京大学のメンバーの方にお願いして……。ともかく、大学、大学院で、こういったものを使って、どのくらい、どういうことができるのだろうかというあたりを検証するということが、我々の……。

 基本方針といたしましては、単純なことで申しわけないのですが、しかし、これは非常に重要なことでして、日本人が使いやすいということで、STARLOGOにしても、ご承知の方はあれですが、SWARMにしても、フリーのソフトでダウンロードが簡単にできるのですが、やはり基本はクリアーでないとだめ。マニュアルがないとか、そういったようなところで……。それから、主にというか、……シミュレーションをつくってこられたと思うのですが、社会科学分野の人で使える。これは社会科学分野の研究者を侮辱するような言い方になるかもしれないのですけれども、やはりコンピュータにそれほど精通していなくても使いこなせるというような方々を対象にできるインターフェースをつくろうということで、社会科学分野は、言語……おられると思いますが、ビジュアル・ベーシックというマイクロソフトの提供する言語体系にほぼのっとった形のシステムということで、エージェント……は……おります。またこれはVB(ビジュアル・ベーシック)ではなくて、……じゃないかと、いろいろこれからありますけれども、現段階ではビジュアル・ベーシックで。

 それから、我々は、多分これをクローズのシステムとして閉じるつもりはないので、そういった点で将来発展性のあるオープンなシステムにして、皆様方が提供されるライブラリー、あるいはアルゴリズム、データベースというようなものと結合できるようなオープン性を非常に重視した設計になっています。
 ABSのシステム構築の基本的な概念は、この皆さんにお渡ししたハンドアウトにカラーのA3でまとめてございますけれども、基本はモデル構築の部分と、それからシミュレーション設定の部分と、シミュレーションの実行の部分。こう書いてしまうと非常に単純でございますけれども、従来型のシミュレーションを構築する上で、モデル構築が容易であるとか、……わかりやすいとか、そういうシステムとシミュレーションを非常に設定しやすいとか、出てきたアウトプットを全部まとめて、後でデータマイニングやデータ解析がしやすいとか、そういうようなことを含めたシステムにしております。

 具体的な教育実験の例としては、後で先生方からご報告をいただくと思いますが、東京大学の総合文化研究科の山影先生、あるいは東洋文化研究所の田中先生などにやっていただいた国際政治モデルの構築分野、それから東京大学の経済学部の高橋先生、新宅先生にやっていただいた、経営学、組織論の分野、それから、国際大学の豊福先生がなさった一般教養での授業というような分野、きょうは時間がなくて発表できませんけれども、あるいは、勝手に我々のシステムからダウンロードしていただいて、独自の研究のほうを進めていただいていた筑波大学の大学院生、寺野先生のグループの分野など、いろいろやっていただいておりまして、それなりの成果があるのではないかなと自負しております。

 今後の予定ですけれども、IPAのプロジェクトとしては今月で終わったのですが、……の充実ですとか、あるいは他プログラムとの連動が容易にできるようなこと、それから、もうちょっとシミュレータとしての速さを……、高速化への対応、最後には、決して日本だけでは終わらせたくないので、英語版、あるいは英語テキストの開発というようなことで、……整理をしていこうかなというふうに考えております。

 分野といたしまして、……先生ですが、エリア・マーケティングですとか、交通シミュレーションモデル、それから、シミュレーションというようなものにも、こういったものは使えるのではないかなと思っております。

 きょうは、教育機関の方々に非常にたくさん来ていただいておりますが、1月末まで、当社はウェブ・サイトで、ずっとこの教育ソフトに関してオープンに皆さんに出しておりました。一応バグ出しも終わったということで、現在、今後の対応に関して検討いたしております。教育に関しましては、他の大学で、今まで使っていただいた大学等も、今年度も授業で使っていただくということになっておりまして、今後、もしよろしければ、皆様方、教育機関の方々には、研究計画、教育計画の一環としてこれを使っていただいて、また、その成果のフィードバックをぜひお願いしたい。ただたれ流しで出してしまって、……使い方がわからないような状況だといけないと思いますので、ぜひともそういったような形で、当社と連携をとっていただいて、フィードバックをかけていただく。あるいは、こんなソフトでは使えないよというようなおしかりをいただくというようなこともできればいいかなというふうに考えております。

 企業に対しましては、当面は、ソフトウエアの使い勝手の問題等がございますので、コンサルティング・サービスの提供という形でご利用いただきたいと考えております。それとは別に、当社は、丸の内線の新中野の駅の横、青梅街道と中野通りの交差点のところに新社屋を建てまして、その地下1階がセミナー・ルームになっておりますので、そこで……きょうは財界に関しての研究発表の……ございますけれども、ABSそのものを使いこなすためのセミナーというようなものも開いて……していきたいと。こういったような格好で、長期的に見て、こういった分野が広がり、より日本がよくなることを、夢見ていきたいというのが私どもの考えです。

 雑駁な話でございますけれども、きょうはは非常に……おりまして、いろいろな方がいろいろなことを話される機会がございますので、私のところは、こういうような形で、……、あるいは今後の展開に至るまで、まとめてご報告させていただきました。何なりとございましたら、……あるいは当社の創造工学部のホームページまでご連絡していただけばいいかなと思っております。まだまだ始まったばかりのシステムでございますけれども、我々がこれを囲い込んでも何もいいことがございませんので、皆様方と、こういった分野を広めていくという契機になればいいかなと、これがきょうの私どもの願いでございまして、ぜひとも……いただけるような機会をいただければと願っております。……。

 ちょっと長くなりましたけれども、私の話を終わります。本日は、どうもありがとうございました。(拍手)


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