「人工社会 −複雑系とマルチエージェント・シミュレーション−」

出版記念セミナーの議事録

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【発表者と公演内容】

9:30〜 9:40

 (株)構造計画研究所 社長 富野 壽

Photo of Mr.Tomino

ごあいさつ

【議事録】
 

【冨野】

おはようございます。構造計画、冨野でございます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。表題……、きょうは1日、何か密実なセッションが幾つもあるようでございますので、私は本当に簡単にごあいさつだけさせていただきます。

 構造計画という名前でずっと40年まいっておりまして、昨年40周年を迎えたばかりでございますけれども、構造計画が何でシミュレーション、人工社会だというような疑問を持たれる方も中にはおられるかもしれませんので、ちょっとそのあたりのところをごく簡単に説明します。

 もともとは、いわゆる構造設計、あるいは耐震、地震に対するシミュレーションというようなことでやってまいったのですが、ご承知のように、40年前のコンピュータというのは、どうにもならないぐらいのコンピュータでございまして、そういう中で、私どもにとしては、ソフトウエア工学技術みたいなものを非常に磨かざるを得なかった。OSをつくってみたり、言語プログラムをつくってみたり、シミュレーションのためにいろんなことをしました。

 実は、次第にソフトウエア技術を磨いて、ソフトウエアビジネスの世界に早いころから積極的に取り組んでまいりまして、現代では名前こそ構造計画なのですが、そのうちの7割から8割が大体情報技術サービス、IT産業というところに属するビジネスでございます。ただ、私どもの場合には、非常に当初から会社の理念というものを掲げ、それを堅持してまいりました。その理念というのは、実は、大学研究機関と産業界とをブリッジするような総合エンジニア企業になりたいと、そんな理念でございます。

 それから、昨今では第一級の顧客満足度を第一級の品質及び技術でお客様に提供できる、総合力が発揮できるようなエンジニアリング企業と、そんな旗印を考えておりまして、長い間にさまざまな技術を磨いてまいりました。また非常に多角化してまいりましたけれども、そのベースになっているのは、今申し上げたような哲学、それから同時に、やはり技術であり、数値解析、シミュレーションといった分野でございます。大きなところは、通信カメラのソフトをつくってみたり、ドコモの監視ンシステムをつくってみたり、いろいろなことをやっております。それから耐震のほうも、これもまた数値シミュレーションでございます。CAEとかCAD、あるいはCAM、製造管理のシステムなどにおいても、日本ではトップチームと言って良いぐらいにいろいろやっておりますけれども、これもまたシミュレーションでございます。いずれも、コンピュータ上にモデルをつくり、それをシミュレーションして、設計者や経営者の意思決定の支援をするといったことをやってきているわけでございます。

 ですから、そのラインから見ますと、今回のエージェントベースのシミュレーションというのは、あるいは、複雑系云々という話は、実はあながち無縁ではないどころか、非常に関係している分野でございます。特に、第一級の顧客満足度という中で、実は実業界ではまだ必ずしも認知されていないような手法というものを、努めて早い段階から大学研究機関の先生方、きょうも大勢お見えくださっていますけれども、そのような方々のお知恵をかりて、それを実業界に持っていくということをやっております。最初はあまりもうかりませんけれども、そういうようなことを、振動解析や、さっきも言った実務解析や、あるいはさまざまな形のシミュレーションの中でやってきて、昨今では、これは社会問題というか、社会テーマのシミュレーションにまで入ってきたということでございます。ですから、名前こそ、「構造計画研究所」でございますが、何で名前を変えないかというと……多くの理由があるのですが、実は、耐震、防災という世界では、やはり日本で一流のチームでございまして、なかなか変えがたいのです。

 それやこれやで、実はきょうは、いわゆるシミュレーションの新しいパラダイムと申しましょうか、そういう中で、98年から通産省及びIPA(情報処理振興事務協会)のご支援を得て、ABSというようなシステムを開発いたしました。大学、研究機関などでの教育、訓練に使っていただきたい、そういうチャレンジ、1つの試みの一環で、『人工社会』という本を翻訳し、きょうは、その原著者であるエプスタイン先生にもお見えいただいて、夕方になりますが、先生のご講演をちょうだいする、そんな機会をつくったわけでございます。

 大した話じゃなくて申しないのですが、そんなことで、構造計画としては、ある意味で非常に自然の流れでこういう分野に身をゆだねるようになってきて、現在は、さまざまなシステムの開発をしながら、相変わらず創業の理念である大学研究機関と実業界とをブリッジするということを性懲りもなく続けてやっております。今後とも、皆様方には、いろいろな意味でご支援をいただきたいと存じます。また、きょうお見えの実業界の方には、こういった新しい手法をさまざまな機会に、ご自分たちの意思決定の手段の1つとしてメニューに乗せていただいて、いろいろ新しい道を開いていただく。そういう中で、また私どもがご一緒できれば、大変幸せだと思います。

 ちょっと長くなりましたが、きょう1日、お楽しみいただければ幸いでございます。本日は、どうもありがとうございました。(拍手)

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