カスタマーズコンファレンス2000 e-Technology to the Next Century

Session B. マルチエージェントシミュレーションとリスク分析

セミナー議事録

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【発表者と公演内容】

14:00 〜 15:30

 東京大学,高橋 伸夫 教授

 東京大学大学院経済学研究科教授。専門は経営学、経営組織論(組織設計論・組織活性化・ぬるま湯的体質・近代組織論の生成・組織学習論) 、意思決定論(決定理論・ゴミ箱モデル・やり過ごし・意思決定原理) 、統計調査論(統計調査法・コンピュータ統計学) 。1957年 北海道小樽市生まれ。80年小樽商科大学商学部卒業。84年筑波大学大学院社会工学研究科退学。84年東京大学教養学部助手(統計学)。学術博士(筑波大学, 1987)。87年 東北大学経済学部助教授(経営学総論) 。91年 東京大学教養学部助教授(統計学・経営政策科学)。94年東京大学経済学部助教授(経営学・経営組織論)。 96年東京大学大学院経済学研究科助教授(経営学・経営組織論) を経て、98年より現職。

Photo of Mr.Kuwashima

(写真は桑嶋 助手)

<主著>

『Design of Adaptive Organizations』(Springer-Verlag、1987年)(組織学会賞「高宮賞」受賞)
『経営学』(有斐閣、1989年)(河合忠彦・大森賢二と共著).
『組織活性化の測定と実際』(日本生産性本部、1989年)
『経営統計入門―SASによる組織分析―』(東京大学出版会、1992年)
『ぬるま湯的経営の研究』(東洋経済新報社、1993年)(経営科学文献賞受賞).
『組織の中の決定理論』(朝倉書店、1993年)
『変化の経営学』(白桃書房、1994年)(高柳暁と共編著).
『経営の再生』(有斐閣、1995年)
 (韓国語版 李龍善訳, NANAM, Seoul, 1998年)
『できる社員は「やり過ごす」』(ネスコ/文藝春秋、1996年)
『未来傾斜原理―協調的な経営行動の進化―』白桃書房 1996年 (編著).
『組織文化の経営学』(中央経済社、1997年)(編著)
『日本企業の意思決定原理』(東京大学出版会、1997年)
『経営管理』(有斐閣、1999年)(塩次喜代明・小林敏男と共著)
『生存と多様性―エコロジカル・アプローチ―』(白桃書房、1999年)(編著)
『鉄道経営と資金調達』(有斐閣、2000年)(編著)
『超企業・組織論』(有斐閣、2000年)(編著)など

Topic: 「コミュニケーション競争モデル

 経営学の世界においても、組織論、マーケティング論などマルチエージェントシミュレーションの適用場面は広い。これまで、こうした分野でABSを利用した複数のモデル構築を行ってきたが、本講演では「コミュニケーション競争モデル」を実際に動かしながら、経営学におけるマルチエージェントシミュレーションの適用可能性をご紹介したい。

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【議事録】
 

【高橋】

 今ご紹介いただきました経済学研究科です。経営学じゃなくて、経済学研究科の高橋と申します。助手の桑嶋君と一緒に分担しながら、かたい話は桑嶋君で、やわらかいところはちょっと私がさせていただこうと思います。

 ちょっとかたい話の前に、簡単に何をやろうとしているのかということをご説明いたしますが、今田中先生がご紹介いただきましたように、シミュレーションの話はシミュレーションの話で、それで、私自身は、桑嶋君もそうですけれども、経営学が専門で、私は経営組織論、彼の場合はどちらかというと研究開発を中心に研究してきております。

 今回、構造計画さんのほうからこういったお話があって、ABSというシミュレータを使って何か一緒にというお話がありまして、正直申しますと、最初、何ができるのかなというのが私もよくわからなくて研究していました。私は実はシミュレーションというのは、経営学なんかは本当はあまりやらないはずなんですが、比較的自分のモデルを組んだりしてやっているタイプの人間なんですが、マルチエージェントになったからって一体何が違うのというのは、最初一番大きな疑問だったわけですね。

 きょうこれからご説明いたしますのは、その意味では、私が比較的シミュレーションになれていたはずの人間が、実際にマルチエージェント型のシミュレーションをやってみて、ああ、そうだったのかということを発見していったプロセスをご説明できれば一番いいと思っております。何が違うかといいますと、通常、シミュレーションというのは、設定をしてしまうと、ほぼその仮定からどんな結果が出るか、大体想像できるんですね。大体想像できるというのは、学問的な面からすると当たりがついて非常にいいんですが、裏を返すと、近代経済学のモデルと同じでして、仮定をつくるときにものすごく注意深くつくれば、あとは数学の数式を解くのと同じように、大体想像どおりの答えが出てくるというのを、実は今のシミュレーションも、私なんかの関係ではやっています。

 ところが、これからご説明するマルチエージェント型のシミュレーションモデルは、実は全然想像していなかった結末に終わったんですね。そのプロセスをちょっとご説明しようと思います。企業の方がきょうは多いというお話を伺っていますので、何をイメージして見ればいいかということを最初に申し上げますと、こちらがデモですが、ちょっと動かしてください。この1個1個の点が実はエージェントと呼ばれるものなんです。人だとお考えいただいて結構です。ここに、こうかたまりがあります、あるいはここにこうかたまりがありますが、これを実はクラスターと呼んでいます。つまり、この小さいエージェントがぐちゃぐちゃ動きながら大きなかたまりをつくっていくというプロセス、これを追いかけてみようと思ったわけですね。どういうプロセスでこれがまとまっていったかというのは、これからきちんと桑嶋さんのほうから説明していただきますが、基本的に我々のイメージはどっちかというと研究者の集まりのような、研究所のようなところで、研究者がいろいろなアイデアを……。そのアイデアを互いにコミュニケートするというようなことを、ある意味でえさにして、どうやって集団が形成されていくのか。

 後から大きなエージェントというのが登場しますけれども、大きなエージェントというのは、よく我々の企業ではゲートキーパーと呼ばれていますが、コミュニケーションスターと呼ばれるような存在を通常は想定しているんですけれども、そういったコミュニケーション上はすぐれた能力を持った人が投入されたときに、これで言うとクラスターになっちゃうんですけれども、一体組織の形態がどのように変化するんだろうかということをやってみたいと。実は、これは実際上ではある程度予想がついている話だったはずなんですが、実際にやってみますと、実に意外な結末に終わります。

 それでは、モデルの説明を桑嶋さんからお願いします。

【桑嶋】

 それではモデルのほうの説明を簡単にさせていただきます。まず私どもの問題意識なんですけれども、今少しお話がありましたが、組織というのはどのように形成されていくのか、それからもう1点、どのような性質を持った組織が生き残るのか。この2点について興味を持っておりまして、そのメカニズムについて、今回はコミュニケーションに絞ってモデル化するということを行いました。

 コミュニケーション自体をいわばえさとしたモデルですので、ここではコミュニケーション競争モデルという名前をつけました。基本的なルールは非常に簡単でして、2点あります。まず第1のルールなんですけれども、エージェントはより多くのアイデアとコミュニケーションできるようなポジションを求めて移動する。先ほどそちらのほうに出ていますけれども、その1つひとつのエージェントがアイデアを持って使わないで、そのアイデアを持っているお互いがコミュニケーションできるようなポジションに移動する。このことで、エージェントは単独でいるよりもクラスターで集まっている状況なんですが、集まる状況になる。このクラスターに参加することを先行するというのが第1のルールになります。

 第2のルールなんですけれども、複数のクラスター、つまり集まりが幾つかある場合には、エージェントはより多くのアイデアとコミュニケートできるクラスターのほうを選択する。今、赤と青がありますけれども、このことで複数のクラスターが衝突した場合に障害が生まれる。赤が青に変わったりするのはそういうことなんですけれども。

 もう1つの今回の特徴は、先ほど多少説明がありましたが、今はみんな周りが同じ大きさなんですけれども、本モデルでは表面積の異なる数種類のエージェントが存在するというふうに設定しています。ここでは、表面積というのが、いわば比喩的な表面でして、実際にはコミュニケーション能力をあらわしているというふうにモデルの中では設定をしております。モデル上、コミュニケーション能力の大きいエージェントというのは、表面積の大きなエージェントとしてあらわされます。表面積が大きいということは、今そこに出ているのは全部大きさが同じですが、大きさが2個とか3個連なったようなそんなエージェントを考えていまして、表面積が大きいエージェントというのは、より多くのエージェントと接触できることになりまして、その結果、コミュニケーション能力が高くなるというふうに考えているわけです。

 今のようなモデルを考えてシミュレーションを後でごらんいただきますけれども、その上で観察するポイントというのが何点かあるわけで、ここにある3つぐらいがおもしろいんじゃないかなというふうに考えています。1つは、クラスター間の競争にどんな影響を与えるか。それから、クラスターの大きさがどう変化するのか。さらに、コミュニケーションはどう変化するかといった点です。

 後ほど実際にシミュレーションをごらんいただきますが、その前に簡単にモデルの仕様をご説明いたします。幾つかあるんですけれども、まず第1がパスの長さ、パス長というものを考えています。それはどういうものかといいますと、同色の2つのエージェント、AとBの間がすべて同じようなエージェントでつながっている場合に、ここではそれをパスというふうに呼びまして、AとBがコミュニケーション可能だと考えています。例えばそちらですと、右側の上のほうに青がつながっているのがありますが、そのつながりをパスと考える。後ほど例を挙げてご説明いたします。パス長のLというのは、エージェントのAからBに到達するまでに経由するエージェントの個数というふうに定義いたします。ただし、B自体もございますので、AとBが隣接している場合にはLを1と断定。幾つかパスがあった場合には、そのうちの最短のほうに出るというふうにここでは定義いたします。

 具体的にご説明いたしますが、まずLが1のものなんですけれども、これはAとBが隣接しておりますので1と。それから、これは縦でも横でも斜めでも同じでして、これは1なんですね。次はAが5のものですが、これは単純に横に1、2、3、4、5とつながっている。斜めに進んでも同じで1、2、3、4、5ですね。この場合ですと最短ですから、1、2、3、4、5というふうに数えます。これは6個の場合も同じでして、やや見にくいかもしれませんが、1、2、3、4、5、6ですね。右側の場合には1、2、3、4、5、6というふうに数える。このように数えます。実際には、シミュレーション上は左側での数であらわされますが、数え方としてはこういうふうになります。

 次にクラスター値というものをここでは考えております。クラスター値というのは何かと申しますと、あるエージェントにとってコミュニケーション可能な同色のエージェントのクラスターの際、クラスターというのは、先ほど申し上げましたが、集まりの大きさのことです。ただし、そのクラスターのサイズといいましても、クラスターCは、単にクラスターを構成する同色のエージェントの個数と合計数ではないということに注意が必要で、L、つまりコミュニケーションの距離が長くなると、その分コミュニケーションにかかる時間が長くなるというふうに考えますので、ここではL分の1、多重した合計数、つまり2個つながっていれば2分の1、3個つながっていれば3分の1という考え方をして計算いたします。

 したがいまして、同じクラスターに所属していても、そのエージェントのポジションですね。例えばそちらですと、端にいるのか真ん中にいるとかといったそのポジションによってCの値が変わってくるというふうになります。一般にクラスターの中央に近くなるほど、Cの値は大きくなるというふうになります。簡単にこちらでご説明いたしますと、まず、Aの場合には、今一番左端ですけれども、Aにとって、つまりパス長が1のエージェントというのは、隣り合っている1、2、3ですね。この3個が隣接して、Lが1がモデル。3について距離が1ですから、そのまま3×1で値は3。Aにとって、パス長が2のものというのは、1、2、3、4、5とありますけれども、5×、距離が2ありますから、2分の1加重しまして計算すると2.5。それから、Aにとってパス長が3のものが1、2、3と、右の端っこの3となります。距離が3ありますので、3分の1を掛けまして1。これを合計したものがAにとってのクラスター値で、6.5というふうになります。

 Bについて、見にくいかもしれませんが、これが左から一番下の左から2番目がBなんですが、Bにとってパス長1のものが取り囲んでいる1、2、3、4、5になります。距離が1ですから、5×1の値が5、それにパス長が、これにとって2のものというのが、この端のほうですね、1、2、3、4、5、6なんですね。6×、加重平均2分の1を掛けて3。この合計の値の8がBにとってのクラスター値になります。少し中央に、Aよりは、どちらかというと中にいくと少し値が大きくなる。最後にDは、見にくいかもしれませんが、これがDなんですけれども、Dにとっての値は、Dにとって周りを取り囲んでいるのは、全部距離が1のものでありますから、1のものがここで8。Dにとって距離が2のものが1、2と入って、ヒ……ションですね、……ございますので、3×、距離が2ですから2分の1を掛けて1.5、値が9.5。Dはクラスターの中のかなり中央にありますので、値が一番大きくなるということになります。

 次に、モデルの仕様の3番目になるわけなんですけれども、基本的なルールとしましては、今のように定義したものにつきまして、各エージェントは、より大きなクラスター値Cを求めて移動するというふうに設定をしております。各エージェントが1キの間に移動できる距離はここでは1に固定しています。各エージェントは、距離1の範囲でほかのエージェントをサーチします。逆に言えば、その距離が2以上離れると、エージェントは他のエージェントを回避することができなくなるということになるわけです。

 先ほどちょっと申し上げましたが、別の色のクラスターが接触したエージェントは、もし相手側のクラスター値のほうにくみしたほうがCの値が大きくなる。つまり、クラスター値の値が大きくなるというふうに判断した場合には、相手側に乗りかえる。つまり赤でしたら青になりますし、青でしたら青になるというふうに色が変わるというふうにここでは考えます。
 次、先ほど申し上げました大きなエージェントということになるわけなんですけれども、大きなエージェントは、モデル上は表面積が大きいというふうになります。ここでのポイントなんですが、どんなに大きなエージェントであっても、パス長、パスの長さをはかるときには1と数えるというのが、ここでのポイントになるわけです。では、そういった大きなエージェントを投入した場合に、シミュレーションはどうなっていくかという予想なんですが、これが当初私たちが予想したところなんですけれども、予想としましては、大きなエージェントが投入されますと、そのエージェントは2つないし3つぐらいのつながったエージェントを確認して、その周辺に長さが1のエージェントがたくさん集まって、より大きなクラスターが形成されるんじゃないかということを私たちは予想したわけです。

 先ほどごらんいただきましたようにいろいろ動きますので、いろいろ動いているうちに、大きなエージェントが何か偶然つながって、コミュニケーション・ハイウェイみたいなものができるんじゃないかと。そうしたクラスターが非常に強みを発揮して大きく成長するのではないかということを、私たちは最初に予想したわけです。

 大きなエージェントを投入すると、クラスター値というのはどういうふうに変わるんだということになるわけなんですが、先ほどのこれは位置的にはAとBは同じです。ここではBにクラスター3個分の表面積の大きなエージェントを投入した例になるわけなんですけれども、Aについてちょっとクラスター値をご説明いたしますと、Aにとってパスの長さが1のエージェントというのは何個いるかということなんですが、Aが一番左端の下ですね、それから上の1個、それからD、これは全体で1と数えますから1個、それから隣のBも1ですね。そうしますと、Aにとってパス長Lが1のものというのは3個あります。3×、先ほどと同じように距離が1ですから1で、3.0の値。

 それから、Aにとってパス長が2のものなんですが、1、1個ですね。それから、B自体、これはもうこれで1個と数えますので、1、2で、ここがまたパス長2ですね。同じように、ここもパス長が2、同じようにここもパス長が2、これも2になります。ここも2ですね。これも2、そしてここも2になります。したがいまして、Aにとってパス長が2のエージェントというのは、ここでも8個存在します。パス長が2ですから、2分の1にしまして、8×2分の1で値が4。したがいまして、Aにとってのクラスター値は、ここでは7.0になります。投入しまして、Bにとってのクラスター値なんですが、パス長が1のままBを取り囲んでいる1、2、3、4つですね。4×1で4.0。パス長がBにとって2のものは、Dでございますから、1、2、3、4、5、6、7個ですね、7個全部存在する。したがいまして、計算しますと、パス長は4になりますから、3.5の値で合計7.5というふうになります。表面積の大きなエージェントを投入しますと、全部同じ大きさの場合と比べて、クラスター値の値が変わってくるというところが1つのポイントになっています。

 実際にこれからシミュレーションをごらんいただくわけですが、今回のシミュレーションは、基本ルール同士のシミュレーションをごらんいただこうと思います。お手元の資料には、ディスカッションペーパーと書いてあると思うんですが、実際には、今回のシミュレーションには幾つかルールが存在しておりまして、今回は時間の都合で基本ルールのシミュレーションをごらんいただくということになります。今回は空間につきましては、格子モデル、大きさは20×20に設定いたしました。
 ケースの1では、長さ1の赤いエージェントを10個、それから青いエージェントを10個のもの。もう1つの例としまして、赤いエージェントは長さ1のものを運ぶ。それから、長さが3のもの、要するに先ほど説明しました表面積の大きなエージェントなんですけれども、それを2個の合計10個を投入します。青いエージェントにつきましては、ケース1と同じく長さが1のものを10個入れております。それぞれのケースで30回ずつ試行いたしまして、各試行300回ごとに、平均のクラスター規模とクラスター値の合計を記録しております。

【高橋】

 それでは、早速シミュレーションのほうをごらんください。こちらをご注目いただければと思います。

 これは、小さいエージェントばかりのときと、さっきとは実は最初のスタートのときの乱数シード値を変えると初期配置が変わりますので、先ほどと初期配置が違います。違いますと、実はこういった形で、さっきとは違う結果になるわけですね。これがいわゆるクラスターと呼ばれるものになります。だんだんとこうやって大きくなってくる。これが大きくなってきますと、こういった形になります。もう少し詳しく言うと、これはもう4個の場合は動きません。これはいわゆる均衡に到達している場合です。それから、この3個の場合は、実を言うと、これは動いているように見えて、4つのセルの中をただ移動しているだけなんです。いわゆるロックインの状態になる。

 ここに5つのエージェントからなるクラスターがありますけれども、これは、ずっと観察しているとわかりますけれども、いわゆるランダムウォークをします。これがあちこちに移動しながら、接触すれば大きなエージェントを形成するというようなことをします。ただ、これはもう既にここに固まっちゃっているのが4クラスター分あって、この1個だけが一生懸命ランダムウォークで動いているというスタイルですね。

 注目していただきたいのは、今ここでは青が1、2、3、4、5、6、7、全部で20個ありますけど、赤が13個あるということです。つまり、赤対青は、赤が13、青が7という初期配置で、大きなエージェントを投入したらどうなるかということを次にごらんいただきます。ここにさっき言いましたけど、長さが3の大きなエージェントがあります。マルが3個つながっているように見えますが、一応色を濃くして識別しております。それと、これは横に長いやつしか今回は想定しておりませんので、本当は縦もあったほうがおもしろいんですが、今回は横の長いのが入っている。ほぼ同じというか、大きなのが入っていますとちょっとほぼとしか言いようがありませんけれども、初期配置から始めて、さっきと結末がどうなるか。つまり、我々の当初の予想は大きなエージェントを入れたほうが勝つんじゃないかと思ったということを念頭にちょっとごらんください。どうぞ。

 速すぎるとわからないかもしれませんが、実は全部青になっちゃうんですね。最初、大きなエージェントが赤だったのは皆さん覚えていらっしゃると思いますけれども、実を言うと、これは30回同じような組み合わせでやっておりますけれども、統計的に言うと、有意にはならなかったんですが、大きなエージェントに入れかえた赤のほうが負けるんですね。回数からいうと、大きなエージェントを入れたほうがほぼ負けるというような傾向があります。なぜかというと、1つには、これは大きなエージェントがすぐ寝返ってしまうんです。つまり、これは考えてみると当たり前の話かもしれませんけれども、人間でたとえるのと全く同じ話でして、私たちは当初大きなエージェントはリーダーかなと思ったんですね。ところが、どうもリーダーとなる素質は能力だけではだめそうだよ。つまり簡単に相手側とか自分側から寝返らないという何か信念みたいなものがないと、単に能力が高いだけで簡単に相手側に寝返っちゃうということが1つわかります。

 それともう1つ重要なことは、これはこのケースだけじゃないんですけど、この大きなエージェントが露出しているんです。これもおわかりいただけると思いますけれども、先ほどの桑嶋さんの解説の中では、大きなエージェントというのは、真ん中にあるんですが、ほとんどのケースでこの大きなエージェントは露出しています。大きなエージェントが露出して、この場合はほとんどこれはもう均衡していますし、こちら側のほうでロックインの状態にこれは入っておりますので、もうこれ以上動けませんけれども、きょう、こういった形で、外部に露出するという形で大きなエージェントが存在しているということになります。つまり、当初の予想とかなり違うんですね。

 ただ、これは最初に申し上げましたけれども、ゲートキーパーという概念からすると非常に近い。どうも私も、それから桑嶋さんも、最初はゲートキーパーという概念とリーダー概念をかなりごちゃごちゃに考えていたと後で気がついたんですが、実は言うと、ゲートキーパーというのは、もともとどういうコンセプトかというと、コミュニケーションスターですから、そのクラスター、あるいは組織の内部と外部のコミュニケーションをつなぐ役割をする人を実は指すんですね。コミュニケーション能力の高い人は、単に組織内部で大きな地位を占めているという意味ではなくて、外部とのコミュニケーションのちょうどゲート、ゲートキーパーというのは門番という意味なんですが、ゲートを守っているという意味でゲートキーパーと言うわけです。ですから、ある意味では、大きなエージェントがこうやって外側に露出しているというのは、非常に当たり前と言えば当たり前、言われてみるとそうかなと思うという結論になりました。

 それで、これがシミュレーションの結果になりますけれども、最初の10期程度云々と書いてありますが、今のやつをまとめた、今は単に勝ち負けのお話をいたしましたけれども、実はやはり大きなエージェントを投入すると、それなりに効果があります。ここには、最初の10期程度は両ケースの値はほぼ一致しているが、それ以後は分岐して、表面積に大きな、つまり大きなエージェントを投入したケースのほうが、平均クラスター規模のクラスター値の合計の値も大きくなるという結果になります。

 これがグラフになります。ちょっと見えにくいかもしれませんけれども、下のほうがこれはすべて小エージェント、最初の……だけで、上のほう、このピンクのほう、紫のほうが大きなエージェントを2つを赤に投入した場合のグラフになります。このデータなんですが、おわかりのように、実は大きなエージェントを投入しても、必ずしも勝敗には影響しない。むしろ、投入したほうが負ける傾向があるということになりましたので、この場合、これ以降はあまり勝敗にこだわらず、この空間全体のクラスターの平均規模、この場合だとこちらが1、2、3、4、5、6、7、8で、だから、残りが規模が12ということになりますけれども、この場合は2つしかクラスターがありませんので、全部で20個のエージェントで構成されていますので、クラスター数を2で割ると、平均のクラスター規模は10ということになります。そうやって求めた平均クラスター規模をこうやって平均したものです。

 平均というのはどういうことかと申しますと、30回試行しておりますので、ほととこの50期には30個データがあります。つまり、各試行について、それぞれクラスター値の平均が出ますので、それをさらに平均したものをこうやって曲線にかくと、こういう値になる。これは、実を言うと、大きなエージェントを投入したほうが能力が高いというふうに見えますが、実は正確に言うと、クラスターの規模が大きくなるのが速いんですね。それは横のグラフだとわかりますけれども、どんどん時間さえたてば小さなエージェントの集まりでも追いついていくんです。つまり正確に言うと、大きなクラスターを投入したらか大きいクラスターができるというのは、ある時点で、こういう比較をすればそうなんですけれども、最終的には小さなエージェントだけのクラスターが追いついていきます。つまり、正確な表現をすると、大きなエージェントを投入すると、クラスターの形成のスピードが早くなるというのがこの1つの結果になります。

 さらに、それをクラスター合計値の平均と書いてありますが、さっき申しましたけれども、桑嶋さんが説明したこのクラスター値というのは1個1個のエージェントで計算できますので、この1個のクラスターでクラスター値の合計が出ます。この空間全体でクラスター値の合計が出るわけですね。つまり、クラスター値の合計が高いということは、コミュニケーションの効率が高いという意味になります。そうしますと、これはもう少し高くてもよかったですが、これもやはりすべて小エージェントが下の赤で、大エージェントを2とする上のこのピンク、紫のところになりますが、やはりごらんになってわかるように、クラスターの形成が速い分、大きなエージェントを投入すると、このコミュニケーション効率の上昇傾向が速い、スピードが速くなるということがわかります。

 こうして見てまいりますと、より大きなクラスターの形成は、スピードの点で効果があるという結論が1つ出ます。

 それからもう1つ、これは先ほどもちょっとここでご説明いたしましたけれども、表面積の大きなエージェントというのは、実はクラスターの中心にはいない。ほぼ常にクラスターの周辺部に位置、つまり露出しています。その意味では、さっきちょっと私が申し上げたように、表面積の大きなエージェントはゲートキーパーとしての位置を保っていたということになります。

 さらに3つ目のことですが、これも最初の申し上げたことですが、実は大きなエージェントを投入すると強くなるのかと思ったんですが、実はそうではない。ここにありますように、表面積の大きなエージェントを投入したことで、赤陣営が強くなったということはなかった。どっちかというと、やや負けぎみだったんですね。これは、理由は、さっきごらんになって、あっという間に赤が青になったということをごらんになってわかるように、単に能力が高いだけではだめで、すぐ寝返っちゃうんですね。何で寝返るかというと、これは明らかなんですが、表面積が大きいために敵に囲まれやすいんです。これは想像つくと思いますが、実は敵に囲まれやすいんですね。そのために、単に能力が高いだけでは、すぐに小さな敵に囲まれて、相手が寝返ってしまうんですね。そのために表面積の大きなエージェント自体が寝返ってしまうために、実はこのコミュニケーション能力が高いだけでは、組織のリーダーにはなり得ないという、言われてみると当たり前のことがよくわかってきたということになります。

 実は、ここから先がもっと意外な結果になります。実は、本当はここでおしまいだったはずなんですが、実はここまでは合理的なモデルです。今のがどこが合理的だというのはちょっとわからないかもしれませんが、これから出てくるモデルに比べて、こちらは合理的なんです。なぜかといいますと、現在のポジションも含めて、移動可能なポジションの中で、ここなんですが、最もクラスター値の高くなるポジションに移動する。とにかく移動できるならば、とにかく高いところに移動するというのが、この合理モデル。ところが、これはあることを示していまして、つまり現在のポジションがもしベストだったら、つまり今のポジションでクラスター値のほうが高ければ、もう移動しなくなるんです。そのために、例えば先ほど言いましたこのクラスターとか、あるいはこのクラスターでは、この2つのエージェントを除いて、ほぼ動かなくなります。これは今自分が、エージェントが今いるポジションがベストだからです。これがいわゆる経済学で言うところの均衡の概念になります。いわゆる均衡したために、このクラスターが固まるわけです。エージェントが動かなくなって、現在ポジションにとどまる。これはエンパート・セグメント・エンソーシングと言いますけれども、自己拘束的に今のポジションにとどまるということになります。

 ところが、実は失敗をしてしまいます。これは正直に申し上げますと、我々は全然深く考えてこのことを用いたんじゃなくて、最初間違って、この徘徊モデルというのをつくってしまったんですね。これは実を言いますと、ここに書いてあるのはどこが違うかというと、違いはこの1点だけです。現在のポジション以外に移動してしまう。つまり現在ポジション以外の移動可能なポジションの中で最もクラスター値の高い場所に移動する。つまり、移動が可能だったら必ず移動する。今がベストポジションでも、そこを捨てて必ず移動するというモデルを実は最初につくってしまったんですね。そのことに気づいたのは随分後で、それで結構大きな発見をしたと思っておりますけれども、それをちょっと。

 最初に、先ほどの小エージェントだけの合理モデルのほうをもう一回ごらんいただきます。こういう感じで、思い出していただけるかと思いますけれども、ここにまだランダムウォークしているのがありますけれども、こういう形でだんだんと固まっている。これはもう既にロックインして、今はこれが大きさが5のクラスターになって、これがランダムウォークしている。先ほどと同じものです。

 では、次お願いします。これが徘徊モデルになるとどうなるかといいますと、同じ初期配置から始めるわけです。3のやつはやっぱりロックインしちゃいますけれども、これはずっとごらんになっているとわかりますけれども、とまらないんです。ここら辺もここら辺もみんなそうなんですが、このサム・オブ・ケースだけはロックインしちゃいますけれども、あとは動き続けます。これは、この中には、先ほどご説明いたしませんでしたけれども、活動度という動いているエージェントの個数みたいなのをカウントをちゃんとしているんですけれども、実は、最初にこのモデルを走らしていて、いつまでたっても活動度が落ちないので不思議に思ったんですね。実を言うと、これは今ログファイルを再生していますのでこのぐらいのスピードで動いていますが、まともにやるともう少しスピードが遅いので、ぼーっと見ていると、実はとまっているか動いているかよくわからないことがあるんですが。ただ、活動度がいつまでたってもゼロにならないので、つまり終息しないわけですね。終息しないので何か間違っているんじゃないかということで、先ほども言いましたように、実はこの徘徊モデルになっている。現在ポジションがベストでも捨ててということが設定になっていること後で気がつきます。

 ところが、こうやって今はだんだんと大きなクラスターになっていることはおわかりいただけると思います。ちょっと説明を忘れました。これは、こことこことここがつながっています。あるいは、こちら側とこちら側はつながっています。これはループしているという意味なんですが、ここからずっと丸くなっているという意味なんですが、これはずっとほうっておきますと、最後は1つのクラスターになってしまいます。ただ、ごらんになってわかるように、いつまでたっても終息しない、均衡しないで動き続けるわけですね。

 次、お願いします。こちらの……で結構ですが、それでは、なぜ驚いたかといいますと、すごく単純な発想をしますと、合理モデルのほうが、テンスウ……決まっているんです。なぜかといいますと、今ベストポジションにいる人間が動く必要はないんですね。つまり、今ベストポジションにいるエージェントが動くということは、当然短期的に見れば、クラスター値が下がることになります。短期的に言えばクラスター値が下がることになりますから、動いたモデルのほうが、つまり今のベストポジションを捨てたモデルのほうが、実は合計クラスター値は下がらなきゃいけないんです。ところが、これはまず最初の平均クラスター規模ですが、平均クラスター規模は、合理モデルに比べると今の徘徊モデルのほうが圧倒的に高い、大きいんです。これは後で大きなエージェントを投入したのをごらんにいれますけれども、もう既に2倍とか3倍の高さになっています。最終的には、クラスターは最後は全部大体1個にまとまってしまうということで、クラスター規模は大きなものになります。

 次、お願いいたします。今言ったコミュニケーション効率をあらわすクラスターは合計値というのがありますが、このクラスター合計値をごらんになっても、圧倒的に高い。下の2本線というのが、先ほどごらんにいれた合理モデルなんですが、それと比べると、ほぼ2倍ぐらいの、さっきは100前後でしたけど、今度は200ぐらいまで行動します。つまり、短期的には不利益な行動をとったはずなのに、最終的には大きなクラスターを形成するために、徘徊モデルのほうがパフォーマンスが高いということがわかってきたわけです。

 今度はこの大エージェントを投入したモデルになりますが。お願いします。この大きなエージェントはこういう形で、ちょうどアメーバーの食指のような動き方をします。これは今取り込んだというのはわかると思いますが、大きなエージェントがこの小さなエージェントのクラスターの周りをぐるぐる回る形で、ちょうどクラスター自体が徘徊モデルはアメーバー的な動き方をしますけれども、この大きなエージェントが、ちょうどこのクラスターの周りを回るということで、食指のような働きをして周りのエージェントをかき集めてくる。これはもう100ステップぐらいで1個のクラスターを形成してしまいます。こうなると、この計算上は、200ぐらいのクラスター値の合計までいくということになります。

 これは徘徊モデル、大きなエージェントを投入した場合の動き方、これはやっぱり30期の平均をとっていますけれども、これなんかは最初から全然動き方が違います。でも、300期までしかとっておりませんけれども、ほぼ300期前後ぐらいで、この徘徊モデルだと、クラスターのサイズが20になる。つまり、1個のクラスターになっちゃうんですね。ただ、ここで何で変動しているか。ここをごらんになるとわかります。ちょっと変動していますよね。これは実は、この絵でごらんになれるかどうかわかりませんが、これがそうですね。時々、ナルシンギのようにエージェントが飛んでいっちゃうんですね。これは合理モデルではありませんので、とにかく動くということを基本に置いているモデルになるんですね。時々ナルシンギのように、小さなクラスターと大きなエージェントが、クラスターを離れる瞬間があります。離れる瞬間、実はクラスター全体が2つに割れたわけではないんですが、1個でも離れると、それはクラスター1個と数えますので、そういうことが1つでもあると、こういうところが加速を変動するということが実は起きるということになります。

 もう1つ別の設定をしてあるのをちょっとごらんに入れますが、どうぞ。これもこういった形で、クラスター全体が生き物のような動き方をして、こういった形でどんどんまとまっていきます。今、取り込みました。こういうのを取り込みます。今これがちょうど食指のような働きをするんですが、ぐちゃぐちゃと動きながら、こんな形で最終的に1つのクラスターになってしまうということになります。つまり、これでクラスターの形成が、もちろん大エージェントを通したほうが早いんですが、先ほどごらんになるように、合理モデルの場合と同じように、大きなエージェントを投入したほうが、クラスターの形成スピードが速くなりますけど、そういう差をはるかに超えて、実は合理モデルに比べると、この徘徊モデルのほうがパフォーマンスがいいんですね。圧倒的に高いパフォーマンスを持っているということがわかります。

 それでは、1つ、ちょっとご説明しておかなければいけないんですが、このグラフが何のグラフかということをちょっとご説明いたします。これがクラスター合計値の平均という先ほどごらんにいれたグラフなんですけれども、ここで大きなクラスターを投入したほうがパフォーマンスがいいというふうにごらんになれると思います。よくごらんになるとわかると思いますが、これは最大値が100ぐらいしかありませんので、大きなエージェントを投入したやつは、この後ずっとこう横に水平に移動するんですが、小さなエージェントだけの場合は、こうやってまだ上昇基調にあるということがわかります。実際、これは何をあらわしているかといいますと、今言った最後の10キを何でとっているかといいますと、徘徊モデルの場合には、こうやってぐちゃぐちゃ動いていますので、必ずクラスター値の合計値が上がっていくわけじゃないんです。変動します。ですから、最後の10キのクラスターの合計値を計算してやりますと、それは大きいほうから順番に並びます。そうすると、大エージェントの投入の場合は、今回は30回やりましたけど、30回とも最後はクラスターが1個になります。そうすると、ほぼクラスター値の合計は200ぐらいに張りつくわけですね。それに対して、すべて小エージェントの場合は、ここまでは1個のクラスターになっていますけれども、ここからはやや分散します。これは何をあらわしているかというと、基本的にまだ300期でも我々は途中経過しか見ていない。もっと長くやると、多分1,000期とかやれば、多分ここら辺の場合でもクラスター細胞は1個になるはずなんですが、実は我々は途中経過しか見ていない。つまり、先ほどの合理モデルの場合と同じように、徘徊モデルというのは時間がかかりますけれども、時間さえかけてやれば、小さなエージェントだけの場合でも、最後はクラスターは1個になって、そうすると、合理モデルの場合と比べて、圧倒的に高いパフォーマンスを出すということになります。

 実際、これはすべて小エージェント、大エージェントに投入、すべて小エージェントは10以上10以内と書いてありますけれども、徘徊モデルの場合は、こういった形で、これが実は下の値。下の値というのは、すべて小エージェントのときはこういう少し低い値だったんですね。大エージェントのときは、この緑色のこの上の値をとっていたんですが、今ごらんに入れたすべて小エージェントだけでも、上位17位以内、つまり300キまでに1個のクラスターに到達したというものだけを抜き出してグラフにすると、20……になります。ごらんになるとわかるように、要するに立ち上げが遅いだけで、最後は同じような値になる。つまり、大エージェントを投することで立ち上げが速くなる。

 つまり、先ほどの研究開発組織だとか、ゲートキーパーとかという話をここでかみくだいてお話ししますと、ゲートキーパーというか、コミュニケーション能力の高いエージェントを投入することで、すぐに何か勝つということはないんですが、大きなエージェントを投入すると、つまりゲートキーパーのような人を投入すると、クラスターの形成スピードが速くなります。つまり、早い段階で立ち上げができる。これがこの考察のゴになります。その理由は何かといいますと、大きなエージェントを投入すると、食指のように機能して、立ち上がりが速くなる。しかし、だからといって、大きなエージェントを投入したから、最後は勝つのかというと、最後は実は同じような値に終わってしまう。だから、違いがあるのは、実は立ち上げの早さだということになります。

 次、ちょっと続けて幾つか再生いたしますので、皆さん、ちょっとお考えいただきたい。私はこれを見るとすごく身につまされるというか、考えさせられるので、皆さん、ちょっと今再生した画面をしばらくごらんになってお考えいただきたいんですが、これは小エージェントだけのケース。今続けて幾つか合理モデルの例をごらんにいれます。何度も申し上げていますけれども、こういった、これはもう完全に均衡ですね。これはロックインしています。この2つの場合がこうやって動いておりますが、これも全部で11個のエージェントからなるクラスターというは、3×3の9個のクラスターの周りを残りの1個がぐるぐる回るという、これもロックインの状態になります。これが1つの例です。


 今同じような設定のものを続けてごらんにいれますが、やはりこれは初期値配置が違うだけで、同じようなケースです。ここにもう既に4個で均衡しているクラスターがあります。これは5個はランダムウォークしています。これは8個ですけれども、これも実は均衡しています。これはロックインしています。ですから、まともな意味で動いているのはここだけということになりますが、ちょっとしばらくごらんください。実を言うと、これはいわゆる経済学者が好きな均衡とかロックインとかと呼ばれている支配的な世界なんですね。動いているのはごくわずかしかない。こういうのがしばらく続きます。ランダムウォークしているというのは、これとこれはつながっておりますので、ランダムウォークしているというのはおわかりいただけると思います。動いていますよね。


 多分皆さんごらんになっていて、今、合理モデルの場合は、すごくつまらないという感じを多分お持ちになると思います。これは次のやつも合理モデルの小エージェントだけのケースですが、これはあっという間にここは均衡になります。ここはロックインの状態になります。これは多分さっき同じパターンですね。真ん中に9個、周りの2個がぐるぐる回るというロックインの状態です。この2個のやつが今はランダムウォークしていますので、これはどこかにくっつくだろう。だけど、ここにあります7個のケースは、ロックインの状態でもう動きません。残りはこのランダムウォークしているのが、どこにくっつくかなと。くっつきました。今、これは均衡形を探しているんです。おさまりがいい状態を探しています。それで均衡します。……いかがでしょうか。つまり、ここは完全にロックインしている。ここは今13個のエージェントがあるクラスターですけれども、13個になった後、みんないろいろと自分の最適配置を探しながら、結局、すべてのエージェントはベストポジションでおさまる。ということで、もうこれで動かなくなる。

 次をお願いします。これも同じようなというか、初期配置は違いますけれども、もう既にここに均衡状態に陥ったというか、入った。これは5個になりますね。これでランダムウォークをします。ここにあるのは3個ですから、何かとくっつかないでロックインしちゃっている。くっつきました。これとこれがくっついた。これがさらにくっつく。ここの5個のエージェントからなるクラスターと、ここの5個のエージェントからなるクラスターが、今のところはランダムウォークをしている。これもくっついているんです。今、これで均衡形を探していますので、で、均衡しました。全部で4×4で15のエージェントからなるクラスターは、均衡形がありますので、均衡する形におさまります。今、これが動いていますけれども、これはたどりつくんでしょうか。もういいですよね。

 徘徊モデルのほうのすべて小エージェントのケースです。つまり、実を言うと、我々は最初に徘徊モデルを間違ってつくってしまって、……形が本当はベストだと思って合理モデルをつくり直したんですね。ところが、合理モデルの今のようなシミュレーションの画面をずっと見て、すごく退屈な気持ちになるわけです。今度、これが徘徊モデルですべて小エージェントのケースを幾つかごらんにいれますが、このさっきの最初のやつと同じ……でスタートしているんですね。実を言うとロックインしたのもありますけれども、これが徐々に周辺のクラスターとくっついてきます。大きくなりますね。この3個というのは、合理モデルの場合も徘徊モデル場合も実はロックインしてしまうんですけれども、この大きなクラスターが動き回りますので、こういったロックインしているのも、全部吸収していく。やっぱり時間がかかりますね。300期以上……。

 次の例をよろしいですか。もう時間がだいぶ迫ってまいりましたので飛ばしていきますが。これはある程度……出てまいります。これは……我々は全然想像がつかなくて見ているんですね。ですから、全くランダムにといいますか、今くっつきましたけど、近くなるからくっつくだろうという想像は実は成り立たなくて、どんどん離れていってしまうこともあるんですが、長い時間見ていると、何だかんだ言っても、この限られた空間の中なので、クラスター同士がいつか出会って、吸収しているというようなことが行われます。今、これも偶然ですけど、下に動き始めました。これは別にさっきも言いましたけど、周りは1しかサーチしていませんので、ここにいるということは実は知らないで動いているんです。知らないでアメーバーのようにぐちゃぐちゃ動いている。それからまた上にいったりというようなことをやっております。

 次、大きなエージェントを投入した徘徊モデル。大きなエージェントを投入した場合の徘徊モデルをちょっとごらんにいれますが、先ほどごらんにいれたやつは、これは動きが早いので、ごらんになるとわかるように、どんどんくっついていきます。これは最終的に全部赤がくっつくというパターンですけれども、こういった形で、大きなエージェントが入ると、全体的にクラスターの動き方も大きくなりますので、割とダイナミックに早い段階で。今くっつきましたね。クラスターが形成されていきます。

 これはちょっと注目していただきたいんです。こういった大きなエージェントが周りをぐるぐる何か食指を動かすような形で動いている。これも今接近している。取り込みました。こういったような形で動く。でも、1個になった後も、こうやって常に形が変わるんです。そのために、クラスター値の合計値が安定しないということになります。

 次、お願いします。もう1個ぐらいで終わりにしますので。今度、ここの場合はほとんど青に寝返っちゃいましたけれども、こういった形で動いて、こうぐるぐる回っているのがごらんいただけると思います。ここで1個になりますね。ここに今接触しました。あっという間に1個のクラスターになります。ここで1個になった後の大きなクラスターの周りをぐるぐる回るということになります。

 つまり、何を私が最後に申し上げたいかというと、実を言うと、合理モデルというのは、経済学とかでよく使うパターンのモデルでして、経済学でよく想定するとおり、均衡したりロックインしたりするんです。ところが、均衡したりロックインしたりする合理モデルの世界というのは、言葉を変えると死の世界なんです。つまり、均衡とかロックインというのは、こういうシミュレーションの形で見なければ、何かすごく均整のとれた美しい世界であるというような印象を我々は持ちますけれども、これはシミュレーションでエージェントが持っているというのを目の当たりにしますと、徘徊モデルの場合は生き物なんです。まるで生き物のようにクラスターが動いて、周りのエージェントは取り込みながら、どんどん自分が大きくなったり、あるいはコミュニケーションの効率を高めていくというので、そういう生き物のような動き方をするのが徘徊モデルです。

 ところが、……フォーシングで、今自分でベストポジションにいたら動かないという合理モデルの場合は、確かに経済学で想定するような均衡とかロックインの世界が登場するんですが、それは、ほとんど死の世界で、ロックインして、周りを動いているごくわずかのエージェントを除いて何も動かない世界です。つまり、これはもっとわかりやすく言うと、無機質と有機質の差のような違いが出てまいります。つまり、これが先ほど一番最初にありましたように、個々のエージェントのルールから予想できない結末というのは、実はこういうことを指しているんですね。途中で申し上げましたけれども、実は最初に間違って我々はこのモデルをつくっちゃったんですね。このモデルをつくったためにいつまでも均衡しないので、学者的な発想からすると美しくないというので、やっぱり合理モデルをつくってくれというので、合理モデルにした。ところが、合理モデルにした途端に、確かに均衡とかロックインとかいうのは登場するんですけれども、すごくつまらないんですね。つまり、確かに合理モデルの場合は、早い段階で均衡もするし、ロックインもするし、世界全体が固まるんですけれども、それはある意味で死の世界を実現しただけで、ひょっとすると、私は経営学の人間ですけれども、経済学者が想定しているような均衡の世界というのは、我々の世界と違う世界を言っているかもしれない。何か、私は経営学者なので、正確に言うと、そこら辺であまりコメントするとどこかから怒られそうな気がするのでコメントしたくないんですけれども、経営学というか、比較的企業の方の場合は、こちらの今言った徘徊モデルのような世界に多分住んでいらっしゃるんですね。だから、均衡するとかロックインするとかというのとちょっと違う世界。いつまでもごちゃごちゃ動いていて、本当はベストポジションだったのに、捨てちゃってどこかに移動するというようなことをほぼ普通にやっているんだけど、長い目で見たら、実は合意モデルで……フォーシングでどこかで固まるというよりは、最終的にはパフォーマンスが高くなる可能性があるということを、実は我々はマルチエージェント・シミュレーレターをやってみて初めて気がついたんです。

 ですから、まとめますと、意外な結果というのは幾つかありますが、大きなエージェントを投入したからといって、その大きなエージェントを投入した赤陣営は勝ったわけではない。それから、大きなエージェントは、ゲートキーパーのように実は周りにいるんだと。我々が想定したリーダーのようには振る舞わなかった。それからもう1つは、ごく当たり前な感覚からするとよさそうに思える合理モデルが生み出した世界というのはあまり魅力的ではなくて、むしろ今ベストポジションにいるということがわかっていながら、そこを捨てて、次のステップに踏み出すような徘徊モデル型の世界のほうが、なじみもあるし、何かより高いパフォーマンスを生み出すということがわかります。

 これで、実際問題、どんなインプリケーションがあるのというのは、もう少し距離感がありますので、もしご質問がありましたらお答えいたしますけれども、基本的にマルチエージェント型をすることで、我々が発見した大きなこととというのは、今までのシミュレーションだと、設計を組んだ段階で大体結末が想像つくんですね。ところが、マルチエージェント型にした途端に、実は結末がちょっと予想がつかなくなる。個々のルールは非常に合理的に組んでいるはずなのに、実は全体的なシステムの振る舞いというのが、我々が想像したのと違う振る舞いをする可能性があるということを、我々自身がちょっとやらせていただいて、そのことに気がついたということになると思います。

 以上で報告を終わります。

(質疑応答)

【遠藤】

 設計……をやっている遠藤という者ですが、ガイブゲームという先生の似た考えのゲームがございますね。あれに似ていると思うんですけれども、みんなばらばらにならないんですよ。ですから、あれを構成している規則というのを、最初に私は聞き漏らしちゃったものですからわからないんですけれども、どういう規則で点が、ふえはしないんですけど、ばらばらになって、でも、星のようにばらばらになっちゃうはずなんですけど、ならないんですね。なぜなんでしょうか。

【高橋】

 ばらばらになるほうを説明すればいいのか、ばらばらならないほうを説明すればいいんですか。要するに、基本的に各エージェントというのは、できるだけ高いコミュニケーション効率のポジションを求めて移動しているんですね。ですから、個々のエージェントは、今自分がいる合理モデルの場合と徘徊モデルの場合はちょっと定義が違いますけれども、合理モデルの場合で言うと、一番高いコミュニケーション効率では、パフォーマンスが高いポジションを求めて移動していきます。合理モデルの場合は、現在のポジションで今ベストだとわかったら動かないというのが合理モデルです。徘徊モデルの場合は、今いるポジションを必ず移動する場所がある限り移動しなければいけないというのが徘徊モデル。ですから、今……のほうにごらんいただいた徘徊モデルの場合は、離れるように見えるというのは、ただ固まって集まるだけではなくて、一たんクラスターとして固まったにもかかわらず、移動しなきゃいけないという何か強迫観念にかられるとお考えいただいてもいいんですが、移動しなければいけないというルールがありますので、そうすると、移動する場所が外側しかない場合にポンと出た。そうすると、ちょうど波しぶきが飛び散るような感じで、エージェントが一度は離れる。

 だけど、一度、例えば、この例でごらんになると、ちょっとあまりいい例ではないかと思うんですけれども、ここに1個ぽつんと出ていますけれども、これは明らかにもっと内側に入ったほうが、ほかのエージェントと接触できますので有利なんです、コミュニケーションパフォーマンスという意味で。ですから、今ここにいますけれども、多分このエージェントは次の瞬間、こっち側に移りたいと思うわけです。だから、離れていくように見えて、またくっついてくるというプロセスは、徘徊モデルの場合であれば、ベストポジションを捨てても必ず移動するというルールがありますので、一度はここからぽこんと飛び出しちゃうことがあるんですが、しかし、一度飛び出してまた振り返ってみると、まだこっちのほうがいいという場合には、これがまた戻ってくるというロジックですね。だから、これはコミュニケーションをえさとしている能力ですので、コミュニケーション、より多くのアイデアと接触できるというポジションを各エージェントが探しながら移動するというルールに基づいていますので、そういった現象が起きるわけです。お答えになっているでしょうか。

【遠藤】

 何か根本的にガイブゲームというのと非常に似ているんですけど、根本的規則がわからないんですよね。徘徊モデルの場合と何とかモデルというのの場合に。

【高橋】

 お手元に……。もしあれでしたら、そこにはきちんと書いてありますけれども、ちょっと今は時間がないからあれかもしれませんけれども、そちらのほうにはきちんとルールが書いてあります。

【坂本】

 分子科学研究所の坂本と申します。大変おもしろい話をありがとうございました。ちょっと専門が物理なので、大変おもしろかったです。コメント1つと質問1つなんですけれども、まず、徘徊モデルと合理モデルは、物理の考え方でいうと温度でして、温度が高いと徘徊して、低い、死んでいるとおっしゃったところは温度が低い。だから、何か徘徊パラメータみたいなのが導入されて、最適な徘徊パラメータとか、そういう話ができるのかなと思いました。

 それから質問なんですけど、コミュニケーションは知らないんですけど、何か二次元で仮定してられる、隣だけを見るというのを仮定されているんですけど、……インターネットとかあると、何か二次元ではなくて、もっとすごい次元で遠くもばりばりコミュニケーションするような気がするんですけど、そういうのはどうなんでしょうか。

【高橋】

 本当はできればよろしいですね。あえて言えば、大きなエージェントを投入した理由はちょっとそこにあったんですね。これはあまり言うと問題あるかもしれません。これは結構時間がかかるシミュレーションなんですよ。大きなエージェントが入ると、多分もっと遅くなりまして、多分我々が……3個ぐらいが今のところは限界かなと。だから、今のインターネットのような話だと、もっと長いエージェントが存在したときにどうなるのかというのは、確かに興味のあるところであります。

 それから、温度の話というのは、私、我が意を得たりという感じがちょっとするんですが、出ないからあれですね。お手元に資料の20、スライドの23をちょっとごらんいただくと、私が説明を飛ばしたところがちょっと載っております。なぜかといいますと、徘徊モデルの、隣の、高変化性向と書いてあるんです。この高変化性向というのは何かといいますと、これは一部では有名なんですけど、例えば私がぬるま湯的体質の研究というのをやっておりまして、日本の会社はみんなぬるま湯的体質だという研究を、みんなとは言いませんけれども、やっていて、この10年ぐらいずっとデータを集めて、大体もう説明ができるぐらいデータは集まっているんですが、本も出しておりまして、そのときのキーワードが、実は高変化性向なんですね。

 変化性向というのは、今温度の話という話が出て、まさに温度の話でして、実は、日本の会社では、うちの会社はぬるま湯的だと感じる人は、比喩はちょっと難しいんですが、体温が高い人なんですね。自分はものすごく変化したい。この変化性向というのはそういう概念なんですが、自分の変化性向がものすごく高くて、なおかつ会社のシステムの側が変化性向、その温度が低い場合に、実は自分の体温ベースで考えて周りの温度が低いためにぬるま湯だと感じるということが結果として出てまいりました。基本的にこれは私の考えた割と簡単なクエスチョネイアーで、何問か質問を、全部で10問とか20問とか質問をとってきて、それで組み合わせると、簡単にお湯の温度から体温を引いた残りの3の部分だけで、ほぼぬるま湯とどのくらいの確率で感じるかというのを説明できるます。つまり、まさに温度なんですよ。ですから、最初、高変化性向と書いてあるように、高変化性向だと私かわからないので実は遠慮したんですが、体温が非常に高いエージェントだという表現はまさにそのとおりで、体温が高くて現状打破型の人というのは、当初のイメージなんですね。ただ、そういう人たちの振る舞いも、ぬるま湯の話とか何とかというのを抜きにしてみると、ただ周りを徘徊しているだけなので、徘徊モデルという名前をつけたということになりますので、ご指摘のとおりだと思います。

【岡田】

 電気通信大学の岡田と申します。大変興味深いご発表でございます。私も実は研究者で、マルチエージェント・シミュレーレョン、ABSができていなかった当時でしたので自分でつくってみたんですけれども、全然違う研究をしていたんですが、全く同じようなことができて、先ほどの徘徊モデル、私も先ほどの温度の話と同じで、わかりやすい例で言いますと、ある種の意思決定平面からあるコストパフォーマンスをとったときに、極大値が幾つもあって、最大値が見つからないために、極大値で満足してしまうという状態が、だからこそ限定合理モデルというふうに分かれていたんですね。

【高橋】

 そうですね。

【岡田】

 その少し裏の性質から入れると、違う極大解にどんどん行くことができる。私は、そのときに、論文ではタイトルを……名づけたんですけれども、それと全く同じことがされているんだなと。ただ、全然違うモデルなんですが、マルチエージェントという考え方でやるとできるんだなということで、恐らくこれはマルチエージェントというシミュレーションがもたらす大きな知見の1つなのかなというふうに、そういう意味で、1つ私は共感を受けたというか、感動を個人的にはしました。ということで、コメントなんですけれども。ありがとうございました。
高橋:ありがとうございました。

【木賀】

 東洋大学の木賀と申します。1つ質問と1つコメントがあるんですけれども、先ほど物理、物質生物をやっている方のところでインターネットの話が出て、このモデルは非常に空間的に制約が多いと。サーチも均衡しかない。もう少し、均衡じゃなくて、もっと遠距離のところと相互作用できるようなモデルにならないかなというふうに思っていて、先ほど質問されちゃったんですけれども、先ほどの2番目の方の局所モデルから大局解というモデルは、物理ではシミュレートダビーニという有名なモデルがありまして、これは……局所解からグローバルコストが行くというモデルがあるんですけれども、それに近いのかなというふうに思ったんですけれども、先ほどの1番目の質問で、均衡しか見られないんじゃなくて、もっと遠くまで見られるようにシミュレーションを変えることはできないですか。

【高橋】

 実は、これは構造企画の、ここに座っていらっしゃる玉田さんと一緒にやったやつなんですが、1つ、学生に丸投げしたモデルだったんですね。つくってみようとやって、実は彼はシミュレーションが遅いことに業を煮やして、勝手につくりかえたあるモデルをつくったんですが、それが今のお話のモデルだったんです。つまり、均衡じゃなくて、ほぼ空間全体を見渡したようなのを勝手に誤解してつくったんですね。その結果どうなったかというと、何かクラスター同士が引き合うようにして一緒になるんですね。今のモデルをごらんになるとおわかりのように、偶然動いていて接触して1つになりますね。だけど、遠くまで見渡せる場合は、なぜかわからない。例えばここら辺にいるクラスターとここのクラスターがぎゅーっと引き合うようにして一緒になっちゃうというような現象が起きるわけです。ですから、多分サーチする範囲がふえると、早い段階で1つのクラスターになる。だけど、サーチするの範囲が狭いと、多分長い時間をかけてクラスターが1つになる。そのときに、なぜ学生のつくったモデルを取り上げなかったのかというと、その学生自身も言ってましたけど、マルチエージェントっぽくないというのが。個々のエージェントでは、完全な合理性を持っているような動きをするわけです。つまり、空間の中での最適ポジションを求めて移動しちゃう。それがどうも我々が見ていても、何かマルチエージェントってこんなのじゃないんじゃないのというような非常にきれいなまとまり方をしているんですね。そのために、マルチエージェントっぽくないという表現は実はあまりいい表現ではないかもしれませんけれども、完全合理性みたいなものを仮定してしまったらば、少しマルチエージェントの趣旨から反するかなというので、それはやめてしまいました。

【木賀】

 ちょっとそれに付随していく話なんですけれども、シリコンバレーとか、東京の大田区とかいう集積効果とありますね。あれはインターネットでは絶対にできなくて、フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションがないと、ああいう集積効果は上がらなくて、インターネット上にシリコンバレーはできないという意味で、最近では言われています。

【高橋】

 それは、経営学でも全く同じことが言えます。

 

 

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